快晴を翔ける (ページ14)

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中天ページ14

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「世の中お前より辛い境遇の子どももおる。お前より苦労して、それでも生きとるよ」
「っ…」
「鷹宮の二人は確かにあんなやけど、お前には兄貴がおるし、俺だっておる」

棘のような言葉で串刺しにされた心を綿で包まれるような。上手く息は吸えないのに、息苦しさが抜けていくような気がした。
トリイくんは正しい。悲劇のヒロイン気取りで、私だけが不幸だと思っていたのかもしれない。それが馬鹿らしくて、恥ずかしくて、両手で顔を無造作に覆えばA、と私の名前を呼んだ彼はそれを許してはくれなかった。

「お前、自分の言葉をぶつけた事無いやろ。出来ないことは出来ないって言ってええんやで。辛いし、大変やと思うけど、お前の道なんやから」

お前が幸せに生を終えてくれれば守護神様様ってとこやろ、そう言って笑いかけたトリイくんは背中の翼を大きく振るうと戻ろか、と私の両手を取った。
さっきよりもダイレクトに風を感じながら彼と共に学校の屋上へ降下していく。

屋上に降ろされると先程どこかへ行ってしまったフェンスが何事も無かったようにそこに存在していた。そこから下を覗けば、まるで写真のように人も植物も動かず、世界は隣の神様の所為で時を止めていた。

【中天(ちゅうてん)】
見上げた空。