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「ほんとに分かってんのかな。」
抱きしめたまま、アゴを私の頭に乗せて話すから、アゴが当たって痛い。
「い、痛いよ…。」
「え?これ?」
楽しそうに言うと、アゴを私の頭にゴリゴリとしだす。
「いたっいたいってー!ってかそれ、玉森くんも痛いでしょ(笑)!」
バッと体が離れ、正面に彼の顔。
目尻を下げて笑っている。
「うん、痛い(笑)」
「顔にダメージはダメなんじゃない?」
「だなー(笑)」
イテテとアゴをさする彼を見て、アイドルの顔に傷を作っていたらどうしようと、さっきとは別の意味でドキドキしてくる。
「ちょっと、見せて。」
私はサッと玉森くんの顔に触れ上を向かせてアゴをじっと観察する。
幸いちょっと赤くなってるだけで、傷はできてはいなさそうだ。
「よかった!傷はできてない。赤くなってるから冷やす?」
アゴから顔に視線を移すと、じとっと私を見ている玉森くん。
「A、そーゆーとこだよ。ぜんっぜん分かってないじゃん。」
パッと顔に添えられていた私の手を取ると、親指の付け根あたりに、触れるだけのキス。
私の手にキスをするその横顔がキレイで、うっかり見惚れてしまった。
呆然と見ていた私に気づき、唇の端だけを上げてニヤッと笑うその表情も、全てが物語の中で起こってるんじゃないかってくらい、現実感がなかった。
「じゃ、そろそろ帰ろっかな。」
「あ、う、うん。」
サササッと帰り支度を整える彼。
「あ、意識してとは言ったけど、それで過剰に避けたりしたら怒るからね。とりあえず、今はこのままの関係でいいからさ、急にそれ、壊さないでよ。」
帰り際、玄関まで見送る時にビシッと指ををされて言われる。
もう一緒にご飯とか誘われても行けない!と想っていた私はギクッとしたが、素直「はい…」と返事をした。
その後は、ふわっといつもの笑顔に戻ると、くしゃっと頭を撫でられ、「美味しかった。ありがと。またね。」と言って、去っていった。
彼が出ていった扉が閉まってからも、今日言われたこと、あったことが頭の中で反芻されて、しばらく動くことができなかった。
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作者名:kainaniak2 | 作成日時:2019年7月21日 1時