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私もつられてバイバーイと手を振ってると、ドカッと玉森くんが私の隣に座った。
すごく厳しい目でじーっと睨まれているのに、耐えきれなくなって、ふっと目をそらしてしまう。
「ねぇ、A。なんで、横尾さんと抱き合ってたの?」
「あ、あれは!横尾さんが酔っ払って抱きついてきて…。」
突然の呼びすてにドキドキするまもなく玉森くんが続ける。
「は?Aだって横尾さんに腕回してたじゃん。」
「酔っ払ってた横尾さんを宥めてただけだよ?」
「よく知らない男に抱きつかれて、受け入れたら、ダメでしょ!ちゃんと拒否すること!」
「…はい…ごめんなさい…。」
なぜか叱られてしまったので、俯きながら謝ると、玉森くんが「うりゃっ」ってチョップしてきた。
「いたいー。」と言って顔を上げると、チョップの手がスッと頭の後ろに回る。
そのままぐいっと頭を寄せられて、反対の腕で体ごとぎゅっと抱きしめられた。
「えっ…と、これは、拒否した方が、いいの?」
「俺は、よく知らない男じゃなくない?だから、いいの。」
玉森くんはそう言った後、ギュって私を一度だけ強く抱きしめるとパッと腕を離した。
「帰ろっか。」
「うん…。」
お会計は帰り際に藤ヶ谷さん達が済ませてくれていたらしく、そのスマートさん感動した。
「玉森くん、お二人に、お礼言っておいてね。」
「えぇ、言う必要ある?」
「あるよ!」
「はいはーい。」
軽く流され、そのまま店を出ていつものようにタクシーに乗り、私のの家の前で止めて2人で降りる。
「気をつけてね。」
そう言って私が手を振ると、彼の右手が伸びてきて、頭をくしゃっとされる。
「こっちのセリフ。」
まっすぐこちらを見ている瞳に捕らえられ、一瞬動けなくなる。
彼はフッと優しく笑うと、ふわっとわたしの髪を整えるように撫でて、去っていった。
抱きしめられた時の腕や匂い、撫でられた指の感触がずっと残って、部屋に帰ってからもドキドキが収まらなかった。
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作者名:kainaniak2 | 作成日時:2019年7月21日 1時