CHUDOKU (ページ8)

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CHUDOKU - y 4 ページ8

あ。

ヤバイ。

倒れ込んだ先は、目の前に渉の後頭部。

ふわっと彼の匂いがする。

「酔ってんの？」

「う、うん、酔ったかも。ご飯美味しくて、進んじゃったし。」

半分程振り返って私を見る彼の、切れ長の目と、視線が合う。

今までにないほどの顔の距離に、ドキドキが止まらない。

「ねぇ、終電、もうないよ。」

さっき時計を見たからわかる。

終電にはまだ1時間近くある。

「うん…ない、もう、ない、ね。」

視線を合わせたまま、私たちは、はじまりの嘘をついた。

早くなる鼓動と一緒に、今まで押さえつけてきた気持ちも、どんどんと膨らんでくる。

何か言いたいのに、言わなきゃいけないのに、喉は固まったように動かない。

息をするので精一杯だ。

「部屋の電気、消してみる？」

「えっ？」

「なーんて(笑)」

と言いながら、片手でリモコンを操作したのだろう、フッと電気が消えた。

部屋には、さっきから流れているテレビ画面の灯りだけ。

渉が体ごと振り返って、正面から目が合う。

彼の目の前、ソファの上に置かれた私の手に、彼の細くて長い指が重なる。

ずっと触れたかった彼の手は冷たくて、大きくて、想像よりももっと男の人の手だった。