階級学園【小説】 (ページ30)

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お願い琴ちゃん！【市原海斗】ページ30

体育祭を数日後に控える今日。
ヒナから会長がランニングしてるなんて噂を聞いたので、これは不味いと僕もそこそこに体力づくりを頑張っていた。

「ねぇ琴ちゃん！」

授業が終わると同時にボクは琴ちゃんの教室に猛ダッシュ。
レジェンドな上に大人気アイドルともなれば、周りに人垣が出来ているのは当たり前。
彼女を見つけるのは容易だった。

「あっ、アリスちゃん！」

ボクが声を掛ければ、笑顔でこちらに返してくれる。
その声を聞いて、ボクに気付いていなかった生徒はサッと道を開けた。
遮るものが無くなった道を弾丸のように飛んで行って琴ちゃんに飛び付く。

「あのね、髪結んで！」

運動するならやっぱり長い髪は邪魔になってしまう。
汗で首に張り付くのは嫌だし、何時もとちょっと髪型変えるだけで人目を惹くんだもん。
そこで何時も髪を結ぶのをお願いしてるのが琴ちゃん。何時も快く引き受けてくれるし、短時間で割と凝った可愛い髪型にしてくれる。

「良いですよ！」

座って下さい、と近くの椅子を引き寄せて自分の前に置く。
腰掛けると、琴ちゃんがボクの髪に手を掛けた。
鞄の中に常備していたらしい折り畳み式の櫛で髪をすく。

「アリスちゃんは髪綺麗ですね。サラサラです。えーっと、運動するならやっぱり邪魔にならない方が良いですよね」

「うん。何時も通り髪型は琴ちゃんに任せるね」
「はいっ！」

手早く髪を左右に分けて、ゴムとピンを使って纏めていく。
暫くすると「終わりましたよ」という声と共に、鏡が手渡された。
長い髪は二つのお団子にして纏められており、白い花のピンが付いている。

「わぁっ、可愛い……！ありがと琴ちゃん！」

琴ちゃんと別れて、次は家に向かう。
動きやすい服へと早着替えを済ませて、ボクは家を飛び出した。仮にもレジェンドだし、運動神経は悪くは無いと自負している。
一定のリズムを保ちながら足を動かしていると、前方に見慣れた影を見つけた。

「こーいーしーちゃんっ！」
「ふぇあ！？えーっと、あっ、アリス様！？」

その子の名は椿恋幸。庶民だ。
髪型違ってたから一瞬迷ったのかな？

「そこに居たから声掛けちゃった。恋幸ちゃんも体力作り？」
「は、はい……私、運動は全然ダメで……」

庶民だし、運動神経もたかが知れているだろう。

「そっか。ボク今から暇だし、付き合ってあげよっか？」

ボクがそう言うと、恋幸ちゃんはぱぁっと顔を明るくした。