終りの夏の世界 ページ17
.
[僕は陸に問いかけた。君が使命を持つ赤子という事を、僕が君を依り代にすると空は必ず死んでしまうと。だから空が安定した運命を持つまでこの能力を持って空を守ってくれないかと。
僕は陸に言った。君は僕を持っていると必ず死ぬ。それでも空を守る気はあるかい?と。]
陸は一片の迷いもなく頷いたよ。と言う男性の話を聞いて、私の瞳からは涙が溢れる。
それも波にさらわれてどこかに消えてしまうが。
「父さんは、全部知ってたの?自分が死ぬって。だから父さんは自分に幸運をあげたんじゃなくて、私にあげたの?私が運命の子だって知っていたの?」
男性は顔を歪めて、ごめんね。と言った。
[君には、生きてもらわないといけなかったんだ。生きて、この地球の運命を変えてもらわないと、地球が無くなってしまう、もしくは地獄のようになってしまう。
君の使命、君がすべき行動は時が来ればきっと分かるよ。そしてその時はもう近づいて来ている。]
私は目を閉じた。
まぶたの裏には己を犠牲にして娘を守った父さん、その父さんを支えた母さん、弱い運命だった私を守ってくれた姉さんの姿が浮かぶ。
みんな、己の為ではなく人の為に生きて死んだ。
なら私もこの命を、この運命を人の為に、世界の為に使うとこに躊躇してはいけない。
「やります。きっと、やり遂げます。」
男性は母譲りの、光を反射させるほど黒い空の瞳を見た。
芯の強さが見える、光が反射して黄金に輝くその目は男性が奪ってしまった、生来空が持つ色だった。
[君なら出来ると信じているよ。
…そうそう、Aさんとかほさんを許してあげてね。]
はい。と空は頷いた。
そもそも許すも何も、怒っている訳では無いのだ。
かほが何か大切なことを隠していたということに少し傷ついただけで。
泡のカーテンが空の視界を奪っていく。
.
《人の悪意に触れずに育った純粋で力強い乙女。まるで___と同じだ。
繰り返さないでくれ。今度こそ、断ち切るんだ。》
相変わらず寂しげな男の声が聞こえたような気がした。
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ