休息のない一日 ページ20
『あさぎりゲンさん…ですよね？』
「お！知ってくれてる感じ〜？嬉しいね〜」
度々見たことがある。確かメンタリスト兼マジシャンだっけ。マジシャンとメンタリストがどう違うのかと小学生の時思っていたのを覚えている。
「うん、知っているようなら話は早いね。ゲンはメンタリストで人の心理を読み解くことを得意とするんだ。だからゲンには千空の心理を読んで行き先を見つけてもらおうと思う」
メンタリストってそんなことができるのか…というか会ったことのない人の行動パターンまでプロにもなれば読めるらしい。普通に凄すぎる。
私の中ではどちらかと言うとマジシャンのようなイメージの方が強かったので、素直に驚いた。どうやら私がテレビで見ていたのはメンタリストの実力のほんの一部分だったようである。
「実はこれから俺はしないといけないことがあるんだ。だから、うん、A。親交を深めることも兼ねてここのことをゲンに教えてくれないか？見たところ色々歩き回っているようだし、地形はそろそろ分かってきているだろう？」
正直、物凄く断りたい。しかし、どうかな？と頼まれてはなかなかに断りづらい。素材集めがこんなところで仇になるとは思ってもいなかった。
『…分かりました、分かる範囲で頑張ります』
「うん、ありがとう。助かるよ。どちらかといえばこれから関わっていくことになるだろう相手のことを知って貰う方が目的だから説明することに関してはそこまで重要視しなくて良い。また後から俺が補足する。うん、じゃあ頼むよ」
そう言って司さんはどこかへ仕事しに行ってしまった。
…さっさと案内して寝てしまおう。これさえ終われば休める。必死に自分を振るい立たして、あおの頼みを私は受けることにした。
というか軽くうけてしまったが、初対面の男性、しかも芸能人と二人きりで気まずくないだろうか。私ってコミュ力あったっけ。会話なんて出来るのか。途切れて気まずくなる未来しか見えない。緊張してきた。
でも、引き受けてしまったものは仕方がない。
意を決して私はゲンさんの方に体を向けた。
『じゃあ、行きましょうか。宜しくお願いします』
ああ、帰りたい。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
