テレビで見た人 ページ19
お目当ての草は特徴的な形をしているので意外にもすぐに見つけることが出来た。疲労から痙攣している足を駆使して沼に足がつかないように一本ずつ丁寧に切っていく。
なかなか根気のいる作業だが、なんとか無事終了。籠がいっぱいになったところでゆっくりと下山を始めた。早起きをしたかいがあってか、昼過ぎごろの時間帯には帰れそうだ。
折った木の枝を確認しながら気をつけて下山していく。幸いなことに、アクシデントもなく、道に迷うこともなく、安全に降りることができた。
『ふう…』
帰ろう。今すぐ帰っって休みたい。それが良い。山から降りた私は、部屋に一目散で帰った。いや、正確には帰ろうとした。呼び止められたのだ。
「Aちゃん、よね？司さんが探してたわよ。今は洞窟に帰ったらしいから、さっさと向かいなさいな」
…どうやら私が休めるのはまだまだ先みたいだ。行きたくないです、と言いそうになるのを必死で我慢して、お礼を言う。
にしても心当たりが全くない。何だろう。千空さん探し(私命名)にしては早すぎるような気がする。流石に4日で絵を描く準備を整えろと言うほど鬼ではない…筈だ。見当がつかない。
ふと、旧世界でのクラスメイトのことを思い出す。
あの時は後ろめたいことがないんだったら先生に呼ばれても別に何ともないじゃないか、なぜそんなに怖がるんだなんて思ってた。
成績も悪くなく、どちらかといえば先生に好かれるような生徒だった私はあまりよく分かっていなかった。今ならよく分かる。
ごめん、これは怖い。経験しないと分からないものだ。痛くなってきたような気がするお腹を軽くさすって洞窟へと向かった。
…ゆっくり歩いたのにも関わらず、意外と早くついてしまった。
一つ深呼吸をする。よし、大丈夫。
洞窟の中は少しひんやりとしていて熱った肌を撫でる空気が気持ちいい。
「ああ、A、来てくれたんだね。それで話っていうのなんだけど、実は君と一緒に千空を探す人を起こしてきたんだ。うん、これから関わりが少なからずあるだろうし顔あわせ出来ればと思ってね。今時間大丈夫かい？」
良かった、何かやらかした訳ではないらしい。
『はい、全然大丈夫です。それで、その一緒に探す方っていうのは…』
「今洞窟の入り口近くにいる彼だよ」
司さんの目線につられるようにして後ろを向く。
「やっほーAちゃーん！これから宜しくね〜」
そこには、テレビの向こう側の存在だった人が立っていた。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
