服の依頼と杠さん ページ11
『すみません、杠さんって方何処にいるか知ってませんか？』
「杠？あそこに人が集まってるとこあるでしょう。多分そっちの方にいると思うけど」
おっと早速杠情報(私命名)が入ってきた。
情報収取一人目にして幸先がいい。教えてくれた女性に一礼して、教えてもらった通りに向かう。
グループのように軽く集まって裁縫している人たちの一人に杠情報を聴こうとした時。私は杠さんが誰なのかをすぐに分かった。
情報を提供してくれたチュートリアル男性の声が脳内で再生される。
“ここで再訪してる人たち皆んな裁縫が上手いんだぜ”
“んで、中でもトップレベルに上手いのが杠”
一目で分かった。一人だけ、塗っていく手のスイスイ感とか、手慣れている感というか何というか。ああ、自分の語彙力がもどかしい。
一言に凝縮して言うなら、いわゆる”レベチ“ってやつだ。
「あの、杠さん、ですか？」
「はい！杠です！はじめまして…だよね？」
『初めまして、昨日ここにきたAって言います』
…なんだか裁縫してたときの迫力と、朗らかに話しているときのギャップがすごくて気を抜くとやられそう。
『実は服を作ってもらえないかと思って、服のことなら杠さんに頼るといいと聞いたもので』
「わあお、照れますな〜。そう言うことなら任せて！あと、良ければ敬語外さない？呼び捨てで全然良いし！」
さらっと了承されたうえに、タメ口&呼び捨て解禁…？？都合の良すぎる急展開に一瞬脳がバグった。いや、このまま仲良くなっていきたいなーとか、いずれは友達になりたいなーとか、考えてた！でもあくまでそれは理想論であって…
まさかこの数回のやり取りでここまで仲良くなれるなんて。杠のコミュ力が凄すぎる。
もちろん私はそのメリットでしかない提案を了承し、お礼を言って別れた。
夕方ごろに取りにいけば良いと言うことだったので、それまでの時間は暇になるだろう。
まだ日は高い。思ったより早く今日のノルマが終わったようで良かった。
さてと、服を貰うのも達成できそうだし、ここのことについても大まかだが生活で困らない程度には知れただろう。となると次は画材作りだ。
幸い司さんは画材等の準備ができるまで偵察を待ってくれるらしい。
しかし出来るだけ早い方が良いのは確か。悠長に休んでいる暇はない。
『よし…やるかあ』
ふーっと1人気合を入れて、次の作業へと頭を切り替えた。
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作者名：ハント | 作成日時：2023年3月16日 8時
