【HQ】無理して、好き。【稲荷崎】

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最近、サムの様子がおかしい。
あのケバい茶髪が練習見に来てからや。

片付けがまだ終わってないのに体育館を抜け出したり、スマホを見てにやにやしてたり。
……なんか気持ち悪い。

あの女が練習を見に来た日、サムの後をつけると予想通り あのケバ茶髪と会っていた。
なんでや？あんな女のどこがええんや。練習の時に大声出してうるさいのに。

俺は我慢出来んくて、また体育館を抜け出そうとしたサムに声を掛けた。



「お前、またアイツのとこ行くんか。なんであんな奴らに構うん？それに、あのケバい茶髪に」



サムがそこまでする理由が知りたかった。なんだか気に食わんくて、頭をくしゃっと掻いた。

目の前に居るサムは眉間に皺を寄せ、少し怒っているような顔をしていた。
なんでそんな顔するんや。どうしてそこまであの女(アイツ)にこだわるんや。



「…………あの子は、あの子だけは見てくれてんねん、うるさないし。ちゃんと、ちゃんと見てくれてんねん」



サムは俺の目を真っ直ぐ見ながら、真剣な顔をしてそう言った。
あんな顔、初めて見たかもしらん。

小さくなっていくサムの背中を見つめることしか出来なかった。



それから数日。サムは携帯の通知音が鳴るとすぐに確認して、にやついた顔をするようになった。
携帯を見てはにやにやして、気持ち悪い。

でもサムは幸せそうな顔をしていて。……好きな奴でも出来たんか？



「……なあサム」

「なんや」

「好きな女でも出来たん？」

「……は、そんな訳ないやろ」



サムは俺の顔を一瞬見たあと、すぐに携帯に目を落とした。
嘘くせぇ。



「おい、いつもスマホ見て何してるんや。にまっにましてキモイねん」

「おいやめろや」



スマホを隠そうとするサムの腕を掴み、画面を見る。
サムのスマホにはメッセージのトーク画面が映っていた。



「……こもりA？誰や」

「誰でもええやろ。見んなあっち行けや」

「…………もしかしてアイツか。あのケバい茶髪」

「っケバいって言うなや……！」



サムは俺の手をバッと離し、眉を吊り上げた。
なんやその表情。そんな顔も初めて見たで。

……お前、わかりやすすぎるやろ。



「サム、あんな女が好きなんか」

「あんな女って言うな。……別に好きやあらへんし」



わかりやすいなぁサムは。
けど、あの女を好きになる気持ちは全くわからへん。





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