第三十六話 ページ40
目を赤く染めたマリーの、思いが伝播していく。
蛇の能力が目の赤さとして現れ、呼応するように明滅する。
そして、蛇の能力者達が倒れた。
掛ける、隠す、盗む、欺く、奪う、覚める、凝らす、醒ます、冴える。
十の能力から「合体させる」を除いた9人が、糸の切れた人形の様に倒れ臥せる。シンタローのスマホは少し恥ずかしいホーム画面だけが映っていた。
いま立っているのは、シンタロー、アザミ、ケンジロウ、わたしこと「見張る」、そしてマリーだけだった。
「マリー、どういうつもりだお前…?」
シンタローはただただ困惑している様だ。アザミとケンジロウは驚愕していた。
言い換えれば、マリーが起こした「ソレ」が何であるかを知っていて、その上でこそ驚いていると云うことである。
斯く云うわたしだって状況が理解できない。
ゆっくりと頭を振って、ケンジロウがマリーに問う。
「マリー…お前が全ての能力を取り戻しつつあることは知っていたが…
蛇を抜き取った上で支配下に置くなんて芸当、何処で覚えた?」
それは、状況を理解していないわたし達へと向けた説明でもあるようだった。
「…知らない。それより、ドールちゃんを返して」
冷たい相眸がわたしをひたと見据える。
わたしを庇うようにして、シンタローがマリーとの間に割って入った。
「おい、マリー。それは違うんじゃねぇか?…お前、ミハルの事も、諦めたくないって言ったろ」
諭すような、シンタローの言葉。マリーは、激しく頭を振った。
「どういう事?分からない…分からないの、っ…!?」
突然に声が途切れた。マリーがうずくまってうめいている。そして、対照的に立ち上がる人影が見えた。
ヒヨリの貌をした「冴える」だった。
随分と、遅かったじゃないか。
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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時