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第二十一話 ページ24

自己紹介に失敗した転校生の気分を味わっているようだ。と、人なら思う所なのだろうか。
 団員の何人かは笑いを必死に堪えているように見えた。
 ともかく。
 わたしは、初めて持つ物質的なヒトの身体が珍しく、という理由を自分に言い訳して、手を握ったり開いたり、爪先で地面を蹴ったりしていた。頬の紅潮は気にしない。端から見れば失態を必死に誤魔化そうとする滑稽な姿にしか見えないだろう。
「ぷっ…くく、あっはははははは!」
 ついにカノが笑いを上げた。
「ちょっ…カノさん!いくらなんでも笑いすぎです…ド、じゃない、ミハルさん?どういうことなんですか?」
 モモがそれをたしなめるが、残念ながら自らの笑いを含んだ声のせいで真剣さは著しく損なわれている。カノがきっかけになったか、団員のほぼ全員が程度は違いこそすれ笑っていた。
 今は誰もわたしを見ていないだろう、そのくらいの笑い方。発声練習と早口言葉を10セット、それでも止まる気配がない。
 あれ、これ大丈夫かな。更なる自己紹介とか、質問タイムとか、色々考えてたんだけど。わたしが新しい蛇でまだ素性が知れないってこと、皆忘れてそう。
「あのー…」
 そろそろと挙手する。
「ひー…あー、一ヶ月分は笑った…」
 あの笑い方で一ヶ月分ですか。普段からどれだけ笑うんだよ、カノ。
「…で、何?」
 涙を拭きつつ、カノがわたしの方へ向き直る。他の団員もそれに倣った。
「『目を見張る』…だよね。どんな能力かとか、教えてくれる?
 あ、その前に喋れる?」
 けらけらと笑いながら、決して気は緩めていない事を匂わせる。気のおけない友人にはなれそうもないが、気の抜けない話相手にはなりそうだった。
「じゃあ、何を話しえぱ…いえ、何を話せば良いですか?」
 また噛んだ。否、漢字に変換できる喋りをしている時点で成長は見られるのだが。
 じゃあ、とハルカが手を挙げる。
「始めからだと答えにくいかも知れないけど、カノ君に倣って。『目を見張る』って、どういう能力?」
 やはり、といった感じだろうか。
 ともかくわたしはその質問に答えるため、頭の中で筋を組み立て、言葉を吟味し、イメージトレーニングまでをする。
 口から生まれて来たという描写をされてみたいものだと思った。
 そしてわたしは話し出した。

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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

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