【カケ"フ°ロ】目をみはる話【二次創作】 (ページ19)

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第十六話2/2 ページ19

皆に一本ずつペットボトルを配っていく。受け取る際に腕が伸ばし切られないのを見て、少しだけど辛さを感じた。
「さ、飲んで飲んで。あ、ここ、良いかな？」
そう言いながら僕はベンチの一つ、シンタロー君が座っている所に近づく。
「あ、良いっすよ」
　シンタロー君が許可をくれたので(?)、僕は彼の隣に腰を落ち着けた。そしてペットボトルを開ける。ぷしゅっ。
　それを皮切りに、あちこちで軽快な音がした。ぷしゅうぅぅぅ。それが、皆の間にある張り詰めた空気の抜けて行く音であれば良いのに、そう思った。
　それから暫く、炭酸を飲みながら、会話をするでもなくただ全員が黙りこくって過ごす時間があった。僕は色々な事を考える。
　強い表現を使って言えば、失踪した四人の事。さっきぶつかった人の事。ドールちゃんそのものその人についての事、これからどうすれば良いのか、等々。だけどそれは堂々巡りになって、だから僕は空を仰いだ。
　休憩を始めてどれだけの時間が経ったか知らないけど、午前の趣を僅かに残していた筈の空は見ている内に太陽が真上から照らす底抜けの明るさに変わっていた。
　そうして空を見ていると、僕の視界が一旦暗くなって、それからまた明るさを取り戻す。数瞬の後、人が前を横切ったと理解して、視線はその人を追った。
　白いパーカーにジーンズ。ドールちゃんだった。
　ドールちゃんは、メカクシ団全員のその中心に立って、
　深々と、頭を下げた。
　全員の目がドールちゃんに向いていた。
「すみません」
　相変わらずの無表情でぶっきらぼうな口調だったけど、言葉遣いから心の内が知れた様に思った。
　気まずい雰囲気が流れた。
　僕は立ち上がり、ドールちゃんの元へ歩いていく。そして、当たりで手に入れた炭酸を差し出した。
「ドールちゃんの、買う手間が省けたね」
「…ありがとう」
　それをドールちゃんが手にとって唯一空いていたベンチに座った。
　僕も元いたベンチへと戻る。
　気まずい雰囲気は、ほんの少し和らいだ。
　ドールちゃんは、ゆっくりと話し出した。