検索窓
今日:18 hit、昨日:2 hit、合計:1,228 hit

第十六話1/2 ページ18

僕達は、アジトへの道を黙りこくって歩いていた。今は遊歩道に入った所だった。
 あまりに雰囲気が悪いので、モモちゃんなんかはすごくオロオロしていた。僕もみんなに何か言ってあげたいと思うけど、やっぱり何も出てこない。
 こういう時、口下手な自分がとても嫌になる。カノ君なんかは幾らでも言葉を思い付けるのだろうけど、今は、怖い顔をしていた。
 そのまま暫く歩いていると、炎天に焼かれて皆に疲れが出始めた。僕はどうするか迷って、それから皆に声をかけた。出来るだけ冷静に、そしてお兄さんぶって。
「少し休もう。皆、疲れてるでしょ?」
 でも、という声が聞こえる。それでも、有無を言わさぬつもりで僕は繰り返し言った。
「休もう。ほら、僕何か飲み物買ってくるから」
 それから僕は自動販売機の方へ走り出す。振り返って見てみると、皆呆気にとられて、それから渋々といった様子ながらも、遊歩道の脇のベンチに腰を落ち着けていた。
 財布を取り出して中身を検分すると、全員分がギリギリあるだけだった。あと一人でも人が多かったら足りなかっただろう、不謹慎が過ぎるけど、ちらっとそんな事を思った。
 それから、千円札を一枚入れて、少し迷ったあと黒色の炭酸飲料を一律で買う事に決めた。確か嫌いな人はいなかった筈だ。ボタンを押すと、若干長めのタイムラグの後「ガコン」と音がした。僕は、今出てきた、冷えたペットボトルを取り出した。
 そのまま何本も買っていると、5本目辺りで後ろに人が並んだ。僕は慌てて残りも買っていく。
 やっと最後、と思ってボタンを押すと、「ピロリロリン」と音がした。見ると、投入金額の表示される場所に「7777」とあった。人を待たせているのに、と気まずく思うが、取り敢えずもう一本同じ物を買った。
 9本のペットボトルを抱えた格好で振り返ると、バランスを崩してよろめいてしまい、僕は待っていた人にぶつかる。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「…いいえ、お気になさらず」
 もう一度すいません、と言ってから歩き出す。フードを被ったその人の表情こそ見えなかったけど、声色からして余り怒ってはいないだろう。
 それにしても、いつかのプリンといい、僕は飲食物にまつわる運は良いのかも知れない。足元が弾みそうになったけど、ペットボトルを落としてはいけないので我慢した。代わりに頬は緩みっぱなしだった。
 それから、遊歩道に入ってすぐ、皆の姿が見えた。

第十六話2/2→←第十五話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:カゲプロ , 二次創作 , 夢主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。