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第十二話 ページ14

人数分のチケットを買ってゲートをくぐる。
「じゃあ、早速何か乗ろうか!」
 僕が言う。すると方々から「ジェットコースターが良い」「や、やめろ!」「…氷の迷宮…」「お化け屋敷、入りましょう?」等と声が聞こえてくる。
「じゃあ、しばらくは自由行動にしようか」
姉ちゃんが提案すると、それまでの騒々しい発言合戦が嘘みたいに、皆が異口同音に「はーい」と答えた。
 皆が散り散りになっていく。その全てを把握することなど出来ようもないが、その中にあってマリー&ヒヨリ&ドール、という三人組はどこか気になった。
「…じゃあ、ジェットコースター行こうか、シンタロー君」
「嫌だからな…つーか、お前、どこ見てんの?」
「ジェットコースターだよ、シンタロー君」
 うわぁ…とシンタロー君がうめく。頭が良いくせに、随分騙され易いものだ。
 しかし、ここに残っているのは僕とシンタロー君だけなのだ。なぜよりによって…とは思うが、まぁ退屈はしないだろうか。
「まぁ、いいや。どこか行きたい所ある?シンタロー君」
「くどいぞ、お前…まあ行ける所なんてミラーハウスとかしか無ぇぞ」
 僕は思わず吹き出してしまった。自らヘタレをカミングアウトするとは。
「そっか。なら、話でもしてる?それか、今からでも、そうだな、姉ちゃんを追い掛けるとか」
「後者で…と、言いたい所なんだがな。オレも、話したい事があるんだ」
 急に声のトーンを落としてシンタロー君が言う。僕は極力平静に、何、とだけ返した。
「ドールの事だよ。どう思う?」
「…どうもこうも、まず、シンタロー君、ここで喋った事は極秘にして。良い?」
「…ああ。男に二言は無え」
「オッケー。
はっきり言って、不安、かなぁ。
前に、それこそシンタロー君が入ってきた時にさ、大変な事があったでしょ?」
「ああ」
「そんな大事が、焼き直しみたいにまたメカクシ団に降りかからないか。不安っていうのは、その事だよ」
 努めて、へらへらと笑いながらに言った。
 シンタロー君は僕のそんな態度に少し嫌そうな顔をしたけど、僕が一転真剣な顔になると、非難の為だろうか開きかけていた、口を噤んだ。
「だからさ、ここだけの話。
僕はきっとこれから、ドールちゃんさえ居なければ、って思う事が何回か、あるかも知れない。勿論、何か大事が起きたら、だけど」
「…そうか」
「シンタロー君は?」
 僕が訊くと、シンタロー君は考え込むように、さらに言葉を選ぶようにして、ゆっくりと言葉を紡いだ。

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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

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