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第七話 ページ9

僕達は楯山家へ向かっている。ドールちゃんは無表情だけど、足元だけは弾んでいるみたいに見えた。
「楽しみだね!」
 マリーちゃんは放っておくとすぐ駆け出してしまいそうな程、わくわくを隠さない。そのまま、赤信号の横断歩道に飛び出す寸前で、
「マリー…さん?危ないぞ」
ドールちゃんが捕まえてあげていた。だけど、その拍子にマリーちゃんのポケットから何かがこぼれ落ちる。
 アヤノちゃんが少しびくっとする。ドールちゃんはちょっと目を見開いた。
 それは蛇の脱け殻だった。僕も多少びっくりしたので、一応理由を訊いておこうか。脱け殻を拾い上げる。
「これ、どうしたの?」
 あ、とマリーちゃんは目を丸くして、だんだん顔も赤くなっていった。
「誰かびっくりさせようと思って入れっぱなしだった…ごめんなさい」
「あはは。じゃあ成功かな、私本当にびっくりしちゃった」
 アヤノちゃんが朗らかに笑う。僕も笑ったけど、ドールちゃんは何故か目を見開いたまま、僕の方…よりも手前の脱け殻を凝視していた。
「ど…どうしたの?」
 綺麗すぎる目に、どぎまぎではなくただ単にどきどきした。捕食者…まさに、蛇だ。
「かわいいな、これ」
 突拍子もなくそんな事を言うので、僕はますます驚く。マリーちゃんも驚いた顔をするが、だんだんその顔に喜色が浮かぶ。
「ドールちゃんも、かわいいって思う?」
 そのあまりに嬉しそうな様子に僕も得心が行った。
 マリーちゃんは蛇が意外に好きだ。だけど、それを共有出来る人がモモちゃんしかいなかった。蛇好きの仲間が増えるのが嬉しいのだろう。
「アジトの戸棚にね、柄違いのがあるの!帰ったら、見て欲しいな」
 ドールちゃんも興味津々といった様子だ。
 アヤノちゃんの方を見ると、いかにも微笑ましそうにその様子を見ていた。
 二人は、蛇の可愛さについて語り合っている。
 青信号一つくらいなら、見逃しても構わないかな。アヤノちゃんにも、歩き出す気は無さそうだった。

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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

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