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第五話 ページ6

オレは今、モモと一緒に家へ向かっている。向かっているのだが、
「暑いぃ…」
そう、今日はとても暑い。これでまだ午前中なのだから驚きだ。
「なぁモモ…やっぱ行くの止めになんねぇかな…」
「お兄ちゃん…」
 おお、この妹ですら暑さにやられていようとは。
「ニートじゃ無くなったけど、作家なんてほぼヒキコモリだもんね…」
「ちょっと待てモモおい!さも哀れんでるみたいな口調やめろ!…やめてくれ」
 恥ずかしながらオレは、作家という職業に憧れていた理由の大部分を「家仕事である」が占める様な人間だ。しかしそれを妹に言われる筋合いはない!
「お前だってアイドル一時期辞めてただろ…人の事は言えねぇな、元ヒキニートの同志よ」
 話しながら、オレはふと立ち止まる。周りを見回して、やっとあることに気が付く。
「あれ…オレ達迷ってる…?」
 え?とモモもオレに倣って周りを見回すが、すぐにあたふたし出した。
「ホントだ、お兄ちゃん!え?ここどこ?」
「あー…GPS使うか」
 オレはポケットからスマホを取り出した。電源を入れて、違和感を持つ。
「あれ、エネいねぇ?おいモモ、お前ん所にエネいねぇか」
 モモはポケットからスマホを取りだそうとするが、まごついている。財布が邪魔で取れない様だ。
「鞄とか持てよ…」
 はいはい、となんとかモモはスマホを取り出して見せる。
「おーい、エネさーん…。…いないっぽい。どこ行ったんだろ?」
「まあ大丈夫か。これから遊園地だし、実体化してひょっこり出てくるだろ」
 エネはそうそう何処かへ行ったりはしないが、まあ危険はないだろう。つまり直近の問題はオレ達が迷子だ、という事だ。
「GPS…あれ、切れた。そっちの付けてくれ」
「こっちも付かないよ」
 何かがおかしい。電波が悪いのだろうか?
「取り敢えず、前に進んでみるか」
と、歩き出す。
 暫く進むといつもの街に出た。GPSを確認すると、問題なく現在位置が表示される。狐に摘ままれた気分だ。
「まあ、良いか」
「お兄ちゃーん?」
 止まったオレに気付かず前に進んでいたモモが、くるりと振り返る。
「いや、なんでもねぇ。今行くわ」
 オレは早足でモモに追い付こうとする。
 いつも最新型で薄い癖に重いと感じていた、ポケットの中身が心なしか軽く感じられた。

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作者名:一夏 白 | 作成日時:2017年10月12日 7時

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