キス魔な師範【不死川実弥】 (ページ20)

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「おかえりなさい、師範」

返事だけをした。
まだ顔を合わせづらい…。

・

非番の日はいつも夕食を作っていたが、今日はまだ何も用意していなかった。

師範に怒られるかな…？

部屋に戻って来てからもぼーっと考え事をしていた。

・

少し遠くの部屋から物音がしている。

師範が何かしているんだろう…

・

少し遠くの物音を聞きながら、考え事はある結論に至った。

"今朝、師範を怒らせてしまったのは私。

全ての原因は私なんだから、私が謝ればいいだろう。"という結論。

・

これ以上師範とぎこちない関係でいるのは窮屈だから、早く謝ろうと

立ち上がろうとした頃、部屋の扉を叩く音がした。

「はい？」

「A、俺だァ」

・

「扉を開けろとは言わねェから」

師範はそんな事を言っているが、ちゃんと顔を見て話し合いたい。謝りたい。

だから…

・

「うわァ！…っていきなり扉開けるんじゃねェ！」

「ごめんなさい…その…ちゃんと師範と顔を合わせて話したかったので」

・

立ち話もなんだし…と思い、師範を部屋に招いて座って話す。

今朝もこんな感じだったな～

・

「師範、今朝はごめんなさい」
必死に頭を下げて謝った。

「何でだァ？どうしてAが謝るんだよォ」

思いもよらぬ返事に思わず顔をあげてしまった。

・

「Aは何も悪くないからよォ」

師範の優しい声色。

一つ一つ、ゆっくり丁寧に選ばれた優しい言葉と反省の言葉。

・

「あの時、すぐにAの涙を拭ってやれなくて…ごめんなさい」

・

師範の最後の言葉に、また涙が流れた。

「…なっ、何で泣いてるんだァ」

「師範の言葉が…胸に響いて…」

"ほら、泣くなァ"と今はすぐに涙を拭ってくれた。

"ごめんなさい…"
私の思いもちゃんと届くように、師範の前で沢山泣いてやった。

・

「落ち着いたかァ？」

「はい、もう仲直りですね！」

「鼻ぐずぐずじゃねェか」

「もう大丈夫です！」