【歌い手】苦しみたくないから【吸血鬼】

21 ページ21

坂田ｓｉｄｅ


別に俺は双羽ちゃんが嫌いなわけじゃない




人間が嫌いなんだ





10年くらい前まで、俺はずっと家族にいじめられていた



いや、家族なんて呼びたくないけどな



いじめられてる理由は産まれてきた俺が吸血鬼だったから


ただそれだけ




家から抜け出して公園のブランコに座っていた





俺と同じでブランコに座ってうつむいている人がいた



同じくらいの年の人だった




容姿はよく覚えてないけどね




この人も何かあったんだろうなと思った。でもその人は俺とは違う人間。俺を苦しめた存在



その人はブランコから立ち上がって俺に近づいてきた



『どうしたんですか…？』



坂「え、ぁ…」



『すいません。言いたくないことだって誰にでもありますよね』




すごく悲しそうな笑顔だった





同情してほしい。そう思った俺はいつの間にか口を開いていた




坂「信じられないかもしれないけど俺、吸血鬼なんですよ。だから家族からいじめられてるんです。なんかもう嫌になってきて家から抜け出して来ちゃいました。それだけです」




彼女は目を見開いてこう言ったんだ



“私と似てますね”って






偽った笑顔でも素敵で、きっと一目惚れだったんだ




『帰らないと怒られるから、私帰りますね。ありがとうございました』



引き止めたかった。だけど俺にそんな勇気はなかった





私の名前、Aです




と最後に呟いたのをいつまでも覚えている

22→←20(クリスマス番外編)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す