第4話 ページ5
男性は先にバイクから降り、次に私をバイクから優しく下ろしてくれる。 服から少しだけ懐かしい匂いが鼻を掠めた。
すると足の怪我に気づかれる。
「怪我してるじゃないか！痛いだろうに…今までよく頑張って逃げたね」
『あ…はい、痛いですけどなんとか…』
これを使って。と差し出された黄色のハンカチ。可愛いハンカチを汚すわけにもいかず、ありがとうございます、と言って受け取って、使ったフリをしてこっそりポケットにしまった。
もう一度建物をよく見てみた。中央の壁に何かの組織の紋章が飾ってある。まさか、危ないところなんじゃ…？
『ここは…？』
「今日から君がお世話になるところだ」
怯え気味の私にそう言ったバイクの人は安心させるように頭を撫で、怪我を気遣ってくれて、わざわざおんぶをしてくれることになった。地味に恥ずかしい。
建物の中に入ると、警備員に呼び止められるが、ヘルメットの人が胸ポケットから何かを取り出して見せると、慌てたように後退りして敬礼をした。
この人、ここでは偉い人なのかな…？
奥へと進んでいき、一つの大きな扉の前で立ち止まった。
ヘルメットの人は扉の前の警備員に声をかけ、重厚な扉を開けてもらった。
さらに奥へ進むと、赤色の長いカーペットの先に置いてある王座のような椅子に、赤いスーツを着た、白髪に青いメッシュが入った男の人が座っていた。
アクセサリーをたくさんつけていて、まるでホストみたい…と思った言葉は口には出さずに飲み込んでおく。
未だに私を背負っているヘルメットの男性は、赤スーツの人に声をかけた。
「ご無沙汰してます。大事な頼み事があってきたのですが…」
「久しぶりだな。ほう…？その子供は？」
「この子を、Aちゃんを預かって欲しいんです」
『はっ！？』
え、この人に預けられるんですか？
まだヘルメットを被ったままの男性と、白髪青メッシュの人の顔を交互に見る。
私の困惑した心境は置き去りにされ、話はどんどん進んでいく。
「…詳しく説明をしてくれ」
「この子は色々と狙われている立場にあるので、あまり目立たせないで守ってあげて欲しいんです。本当は僕が見てあげられたらいいのですが…今は余裕がないので…」
「…なるほど。貴方の頼みであれば…承知した」
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作者名：アスター | 作成日時：2022年8月8日 17時
