第14話 ページ15
震えている体をなんとか奮い立たせる。少しずつ進んでいき、支えられながら船を降りることが出来た。すれ違った乗組員に心配されて酔い止め薬をもらったけど、もうついてしまったので今から飲むには勿体無い。
港の近いところに車が一台止まっていて、中から肩幅のある大人の男性が一人出てきて私達に近づいて声をかけてきた。
「おかえりなさい、白竜くん…と、あなたは天羽Aさん？」
『はい…』
「ようこそお越しくださいました！私は牙山道三です。聖帝より話は聞いております。ささ、どうぞ中へ」
聖帝とは誰だろうか。と一瞬考えたけど、本調子ではない今の私にその情報を脳で処理できるほどの余裕はなかった。
『よろしくお願いします…荷物はどこに』
「こちらで預かります！」
私の言葉を被せるように、次の瞬間には素早く奪い取って荷物を車のトランクに閉まっていた。その様子を見ていた白竜、と呼ばれた男の子は苦虫を噛み潰したような顔で牙山さんの横顔を見つめていた。まるで「普段そんなことしないくせに」とでも言いたげな顔だ。
非常に丁重…というか、なんだか牙山さんから怯えられた目で見られているのは気のせいだろうか。シュウジさんは一体、牙山さんに何を伝えたんだろう。
車で移動すること数分後。車の窓から見えてずっと気になっていた、変わったデザインの大きな施設にたどり着いた。
車を降りると白竜さんは荷物を置いてくる、と言って一人でスタスタと歩いて行ってしまった。私は牙山さんに手招きをされて、建物の中へとついていく。
内装も特殊なデザインだった。クールでかっこいいと思う人もいるかもしれないけど、私には馴染みがなくて少し堅く感じる。
エレベーターで上にあがって、長い廊下をゆっくりと歩いていく。牙山さんが気遣ってゆっくり歩幅を緩めてくれながら案内をしてくれた。
「女子寮はこの階です。そして、ここが天羽さんの部屋になります。男子は数が多いので相部屋が多いですが、女子は今年の人数が少ないので一人一部屋が多いです」
牙山さんが一つの扉の前で止まり、鍵を回すとガチャリと音が鳴って扉が開いた。先に部屋に入っていった牙山さんに続いて私も入っていくと、5畳ほどの部屋に机が一つと、二段ベッドが置いてあった。
――――――
第0話の追加と、一部文章を修正しました。大筋は変わっていません
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作者名：アスター | 作成日時：2022年8月8日 17時
