刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい- (二)

55 ｢…人は、月の満ち欠けのようなものだ｣ ページ5

｢…っ、｣


あああと声を出したい気持ち悪さに駆られる。前のヤツほんと何なの、怒りを通り越してもうひたすらな嫌悪だ。人として最低だ。無理だ、そして余計に

この神様が、




(何でそんなすんなり信じてくれるのか分からない)


本当に。

自然と、俯いていた顔を、眉間に皺が撚ったまま上げる。混乱した頭のまま、三日月様に言った。


｢あたし、｣
｢…｣
｢あたし、前の、酷い人と同じ見た目なのに、…、どうして、｣



、




その先の言葉は完全に詰まった。
自分で信じてほしい、と願っていたのに、いざ簡単に叶ってみれば、そのあまりの容易さに戸惑う。




だって…、え、あたしがもし向こうの立場なら、絶対無理だもん。
考えても絶対良い事ないと思ってたから、考えるの避けてたけど、



この三日月様たちにとって、あたしって、つい一昨日まで、…ヴォルデモートみたいなもんだったんじゃないの？？ムスカ、悪の大魔王、否、世界中の悪魔の結集体とか…もはやそいつらと並んじゃうか、越すレベルの酷いヤツだったんじゃないの？？？？ ？

ムスカが飛行石も拳銃もいきなり捨てて、｢森と共に生きよう！！！｣とか急変したら、｢…3分間待ってもらっていいっすか？｣ってこっちからまず進んで3分間欲しがっちゃうよ？

無惨様が突然｢私は、鬼殺隊員を、全面的に応援します！！｣とか言ったら伊之助でさえ、猪突猛進やめて一旦冷静になるよ？？？？？？？？？？

そんなのも全部すっ飛ばして、信じよう、て、この、このかみさま、何を基準に、


｢そうだな｣


あたしが言葉を探している最中でも、言いたいことを察してくれたらしい。空いている方の手を顎にそっと添えて、しばらく三日月様は思案していた。

その仕草すら美しすぎて思考が飛びかけたけど、現実にしがみついた。
だってあたし三日月様について何もしらな






｢、｣




ああ、待って、もしかして、…そうだ、今のあたしが1番何より困ってるのは、

彼らがあたしを信じてくれるかというより、

(この三日月様のことを、あたし“が”信じることが出来るかも、分かんないことなんだ、)

ハラハラして三日月様の次の言葉を待ち続けた。少しの間目を伏せて考えていた三日月様は、あたしにまた視線を戻して、言った。



｢…人は、月の満ち欠けのようなものだ｣
｢………ぇ？｣
｢俺は、そう思っている｣


耳から体にすう、と流れた言葉に目を見開く。
…月の、…みち、かけ、…？

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