52 ｢ここにいました｣ ページ2
＿＿＿＿…
｢ほう｣
目を細めた三日月様に、ぐ、とまた喉を潰されるような威圧感を覚える。嘘をつくな。意味は無い。そう直に伝えられているように感じる。
(何もかも正直に、)
それだけが分かった。
そもそも、この神様の前で上手な嘘を思いつける自信が全く無い、絶対無理だ。
何故、こんのすけさんを庇ったのか。
あたしでさえ不思議だった。
ただただ、嫌だった。
あたしが、こんのすけさんが切られるのさえ厭わずゲートに突っ込んで、そのまま、全て消えることが。
ぎゅっと、何度目かも分からない、手汗が滲む握り拳を膝の上で力強く握る。頑張って、話さなきゃ。
(信じてもらえると信じて、話します)
そう、心の中で三日月様に言った。
目の前の美しい神様は、あたしの言葉を微笑み続け、待っている。この神様には、心の中で話したことさえ聞こえそうだと、その目を見て、また思った。
は、と息を吸い込んだ。
｢あたしは、昨日の朝、いつも通り目を覚まして、…ここにいました｣
｢…｣
｢何も分からずにいるあたしが、最初に会ったのがこんのすけさんだったんです｣
｢…｣
｢こんのすけさんは、初めて会った時、ぼろぼろで、傷だらけで、あたしに酷く怯えてました…、｣
どくんどくん、と心臓が鳴る。
｢でもあたしが、元の世界に戻れるよう、最善を尽くして、くれて、…あたしのことを、考えてくれて、｣
｢…｣
脳裏に、こんのすけさんの後ろ姿が蘇った。
俯いて、自分の白んだ手の甲を見た。
｢あたしにも、…分からないんです、咄嗟、だったから｣
｢…｣
｢ただ、…ただ、こんのすけさんがこれ以上、怪我をしたり、この場所ごと消えてしまったり…、っ、そんなこと、そんなの、｣
言葉の最中に喉元が震える。
｢そんな酷いこと、放って、無かったことにして、戻れるかも分からないって、…そう言われた元の世界に、自分の為だけに動くこと、…、そんなの、｣
出来ない。
最後のそれは言葉にならなかった。
言えば言う程上手に何も伝えられていない気がする。
でも本心だった。
それが全てで、懸命だった。
ぶるぶると震える喉元は、怯え、困惑、そして、前のヤツや、あたしをここに連れてきた何か、得体の知れない大きなものに対する怒りさえ含まれていた。
お願いします、どうか、
しんじて、
(どうか、)
｢信じよう｣
｢へ、｣
がばっと顔を上げたそこで、その神様は、初めてあたしに優しく微笑んでいた。
53 ｢信じよう｣→←51 (…やはり恐ろしく、敏(さと)い。)
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません！コメントありがとうございます！(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております！またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして！一気に見させていただきました。とても面白いです！そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか？ (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ＠前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！！！！ (4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして！クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年2月24日 20時
