89 (オレは、) ページ39
_____…
突然だった。
骨が折れたみてえにオレの膝が砕けた。
「!?」
握り締めて血が滲んだ刀ごとその床に倒れ込む。
頭をガン!と打って鼻の奥に寒気が一瞬走る。だがそれと同時に自分の頬にべちゃりと血だか肉片だかもはや分からねえもんが付着した。自分の長い髪が床に散らばるのが見える。浅くしか出来ねえ呼吸を何とか繰り返しながら自分の身に起こったことを必死で考えた。どういうことだ、オレは、いや、オレ達は、
「…!!国広、…ッ!」
ガバッと身を起こしたが、ビキッ!と凄まじい激痛が背骨を通して全身に走る。視界が一瞬暗転して、眼球がひっくり返った。気をやりそうになった。何とか持ち堪えて、片腕ついた床に再度荒く息を繰り返した。
(どういうことだ、何が、起こった、)
自分のほとんどが裂けた傷で覆われた腕を見やり、その先に握られた自身の柄がもはや亀裂と欠片と化しそうな状態にあるのを呆然と見つめた。
オレたちは、
(オレたちは言霊で、斬り合いを、)
命じられた筈だ。
まさか、解けた、のか…?
(……そんなこと、有り得ねえ、)
「はぁ、ッ、はあ、…っ、!国、国広…ッ!」
耐え難い激痛を堪えながら何とか持ち上げたオレの顔の先、凄惨としか言い様がねえ稽古場に、オレの他にもう一人倒れてる奴がいた。誰だかは分かってる、
そいつが今どれだけ変わり果ててようが、
「は、ッおい、おい返事しろ、国広…っ!ッ…!」
腹這いのまま何とかそいつに近寄る。ガシャ、ッとその度鈍い音を立ててオレの握ったオレの刀の鈍い反響だけが稽古場に響いた。ぶるぶると体が震える。
(いてぇ、痛え…ッ!)
折れそうだ、体がまっぷたつに裂けそうだ。ひょっとしたら、本当に裂けてるかもしれねえ。下半身が、全く、まったく動かねえ。
ぐちゃ、と床に付いた手が真っ赤な何かに触れ、誰のかもいつのかも判別出来ないおぞましいそれに顔を歪め、尚全く反応のねえそいつの名を呼び続けた。
(これが、もし、オレが切ったあいつのだったら、)
「国、広…っ!おい、おい…ッ!!」
何とか傍に縋ったそいつはオレと同時に倒れたらしい。衝撃で手放した刀が離れた所に見えた。歪んだ視界で捉えたその脇差にでけえ亀裂を確認して、ぎゅっと目を瞑った。おい、嘘だろ、国広、オレは、
横倒れになったまま息さえしてねえそいつの頭を掴んで、自分の額を強く押し当てた。
「ッ、国広…ッ!!」
(誰か、頼む、…頼む)
助けてくれ…!!
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません!コメントありがとうございます!(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております!またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして!一気に見させていただきました。とても面白いです!そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか? (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ@前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!!!! (2023年4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして!クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥 | 作成日時:2020年2月24日 20時