71 ｢ここ、…｣ ページ21
(広い、まじで、広い)
何だこの屋敷、何だこの超巨大日本家屋。担架引きながら走ってるからか、廊下もかかってる時間もめちゃくちゃ長く感じるわ。何度も差し掛かる曲がり角を素通りしたり苦労して曲がったりして、こんのすけさんについて行くあたしたちはかれこれ部屋を出て1分は走った。いや、1分だよ？体育館の端から端まで走っても1分かからないっしょ？でかすぎじゃない？
通り過ぎる屋敷の部屋、柱、床、天井、全てが汚れている。心做しか靄みたいなものが隅のほうにくすぶっていて、電気のない屋内に入ったら、もうほとんど日の暮れた夜みたいだった。視界にちらつく赤いものはもう結論づけなくても何かわかる。
後ろを一瞬振り向けば、三日月様が担架を掴んでない方の手で、いつでも抜刀、とでも言わんばかりに刀の柄に親指を添えてるから息が止まりそうだった。
｢はあ、っ、はあ｣
曲がり角に差し掛かる度に誰かいるんじゃないかって思ったけど、誰もいなかった。不気味なぐらいに人の気配も物音もしない。ガラガラガラ！と担架を引く音とあたしの切らす息の音だけがある。ここには、何十人ていう神様がいるはずなのに、みんなどこにいるんだろう。みんな、どこで、どんな姿で、
｢到着しました！｣
｢！｣
ぐるぐるぐると考えていた頭に、とある曲がり角を曲がったところで、こんのすけさんの一声が響いて、慌てて慎重に担架を止めた。はあはあと吐く息と、五虎退さんと白虎たちから流れる血が、担架を伝ってあたしの両手に付いているのが見えた。
(できるかな、…ううん、やらなきゃ)
｢…っえ、｣
息を整えながら、ばくばくとなる心臓の音を耳元に感じながら顔を上げたあたしは、自分の真横にある手入れ部屋の、その大きな扉の様相に固まった。
｢ここは、貴方様にしか開けませぬ…我々は入ることは愚か…触れることも、許されておりませぬ故、｣
｢…、｣
両開きのその木製扉には、閂(かんぬき)が掛けられている。そのすぐ上に、大分前に貼られたっぽい難しい字が書かれた三枚の札が、裏の木目が浮き上がる程強く貼り付けてあった。
問題は、その扉にある夥しい量の、切りつけたか引っ掻いたような、何百何千本の傷跡と、大量に飛び散ってる乾いた血痕だ。
(何これ、ここにいる…神様たちが、やったの？)
｢ここ、…みんなを、治すとこなんだよね、？｣
隣に立っていた三日月様を見上げると、彼は、微笑んだままゆっくりその扉に近づいて、手を伸ばした。
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません！コメントありがとうございます！(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております！またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして！一気に見させていただきました。とても面白いです！そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか？ (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ＠前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！！！！ (2023年4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして！クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年2月24日 20時
