涙が132こ ページ3
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───────────…ピーッ…ピーッ…
真っ白な空間で、燻る煙と、無機質な音。
空は、眩しいくらいに晴れているのに、此処だけは違っていた。
?「…トシ。」
煙を燻らしていた本人…−−−−−−−土方は、突然背後から聞こえた声に肩を揺らした。
土方「ぁあ、近藤さんか。どうだった、とっつあんは。」
近藤「んー、とっつあんも中々疲れてたよ。」
“トシには負けそうだけど。”
そう言って笑う近藤も、それに少し微笑んだ土方も、目の下には深い隈。心なしか、少し窶れた様にも見えた。
警察庁も、真選組も、この間の事件の所為で落ち着く暇はない。
何せ、天人の襲来で、幕府が重宝している“大事な狗”が誘拐された様なものだから…。
近藤「でもなぁ…。」
近藤はそう呟くと、ベットの隣に座り、そこで眠るまだ幼い栗毛色を撫でた。
近藤「一番、精神的にキテるのは総悟だろ。」
土方「…あぁ、もう3週間も目覚めてねェ…。」
−−−−−−−…事件当日。
沖田は、美を守ろうと深い痛手を負った。
でも、それだけなら良かったのに、沖田には度重なる精神的負担が一気に掛かってきたらしい。
だから、3週間経った今も、目覚めることはない…。
土方「でも、コイツが…総悟が一番、美の事を理解してた。支えてやってた。」
近藤「そうだな。その癖俺らは…。」
…その後、近藤が言葉に詰まったのは、あり溢れる程の感情に負けてしまったから。
『美は真選組が嫌いだった訳じゃない。』
『美は簡単な理由で真選組を裏切った訳じゃない。』
真選組総括長として、一人の女として、沢山の闇を誰に言う訳でもなく一人で抱えてきた美。
そんな彼女を、真選組が理解し、受け止めたのは、もう既に美が天人の手に渡ってしまってから…。
近藤「美には、沢山の事を聞かねばならんな。」
土方「あぁ。あと…ッ謝りたい…。」
“信じる事が出来ず、すまなかった。”
“沢山傷を付けて悪かった。”
この一言だけでも、言いたかった…と。
でも、美は……。
土方「…ッ…アイツ…、何処行っちまったんだよ…!」
───────────…もう居ないから。
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(面影もなく)
(足音もせず)
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知念菜々(プロフ) - 素敵な小説ですね、思わず泣いてしまいました(笑)これからも頑張ってくださいね (2019年4月26日 12時) (レス) id: 70738b0893 (このIDを非表示/違反報告)
チョコ - とても素敵な小説ですね・・・!感動しました。( i _ i )主人公や沖田や銀さんの想いが切実に伝わってきました。更新楽しみにしております。頑張ってください! (2016年1月24日 22時) (レス) id: 8fa45dd2aa (このIDを非表示/違反報告)
みかんのポン酢 - 更新楽しみに待ってます!!シリアス好きにとっては美味しい(?)小説ですねwww応援してます! (2015年12月30日 12時) (レス) id: a0bf40ef9d (このIDを非表示/違反報告)
クロゥ - 主人公が何もかも背負っているのを見てる沖田と土方と銀さんなどの気持ちと主人公の気持ちを考えて何度も号泣してしまいました。これからの話も気になるので続き楽しみにしています!お身体に気お付けてください!次の更新楽しみにしています! (2015年10月5日 0時) (レス) id: 076214571a (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 主人公が何でも背負い込む所が辛そうで何度も泣いてしまいました。続き、とても気になります更新頑張って下さい! (2015年8月27日 21時) (レス) id: 26fe401622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 x他1人 | 作成日時:2015年5月26日 23時