31 (やっぱりなんて) ページ31
こんのすけさんがあたしの手当を拒んだ理由が分かった。
あたしの顔は動揺に歪んでたけど、どこか心の端で、ああ、こんのすけさんも、こんなにぼろぼろになって泣くんだと静かに感じてもいた。こんのすけさんがこぼす言葉を拾うことしか、そのときのあたしには出来なかった。落ちる大粒の涙が、畳にしみを作っていく。
｢貴方様の霊力に気付き…、自分の血が、止まったとき、私は自分を責めました…っ、｣
｢、｣
｢自分だけ何を良くなっているのかと…、！これでは私の代わりに折れた彼らに示しがつきませぬ…！｣
｢…｣
｢しかし、もはや貴方様に隠し通せぬ程、私の怪我も、ここに充満していた霊力の重圧も…何もかもが変わりつつあるのです、…そして、私は…その変化に、紛れもなく感謝の念を覚えているのです…！｣
｢…、｣
｢何も出来ずにいた無力な私めが、今更何を、と…、されど貴方様に一言でも礼を、…！しかし、｣
何度も「しかし、」と繰り返して俯いていくこんのすけさんを背に、とうとうあたしはばっと立ち上がって、パソコンが置いてある机に真っ直ぐ向かっていた。
机の上に置きっぱなしにしていたそれを引っ掴んで、こんのすけさんの元に早足で戻る。
｢…、？なに、を、｣
目の前にまた座ったあたしを見上げ、こんのすけさんが言う。その小さな目からはまだ止まらない涙が溢れていて、あたしはその目元にゆっくり手をやった。
｢、｣
あたしの手には、こんのすけさんがあたしに渡してくれた手ぬぐいがあった。
決して手は、こんのすけさんに触れぬよう、怯えさせないよう(彼は体をがちっと固めたけれど、)折りたたんだ手ぬぐいの端でゆっくり、そっと涙をひろう。
｢あたし達、お互いのこと、全然わかんないけど、｣
右目、左目と交互に目元に優しく当てながら考えた。
今思えば、こんのすけさんは、あたしが全然別の人間になっちゃったと分かった瞬間、あたしのことを本丸の誰かに突き出して、殺すことも出来たはずだった。
殺すとまではいかなくとも、あたしを利用したり、何かの手段で、あたしをこの本丸で扱う方法もきっと色々あったと思う。でも…そうしなかった。
こんのすけさんは自分に出来、分かる範囲で、あたしに説明し、アドバイスしてくれた。その結果、自分が消えることになると察した上で、だ。
手ぬぐいでひたすら涙をふくあたしを、されるがまま固まって見つめているその狐さんにまた、やっぱりなんて…すごい狐さんだろう、と思った。
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
