4 ｢怪我、大丈夫ですか、｣ ページ4
ぬいぐるみに真剣に話しかけるのは、とうとう終わったヤツと思われるだろうか。いや、そもそもそんな風にあたしを捉える誰かがここにいるのかさえ分からないんだけど、
これは、全国地上波放送並のドッキリ収録ですかとツッコミを入れることしか出来ない程、起きてから目に入る要素のせいで脳味噌がキャパオーバーでふわついてきた。深呼吸して何とかそれを堪えて、あたしは目下の狐に向き直った。
こんな傷だらけの何かに上から声を投げ掛けるのも気が引けて、その場にへなへなと座り込み、未だあたしよりガタガタと震えている狐に、やっとの思いで話しかけた。
｢あの、｣
｢っ、｣
(な、なんて言おう、)
この狐に聞きたいことが山程ある。そもそも何で喋れるのか、あなたは生きているのか、ぬいぐるみか、ここはどこなのか、何であたしはここにいるのか、何でそんな傷だらけなのか、廊下の血と関係あるのか云々。
ぎゅるぎゅると脳内のキーボードのカーソルを彷徨わせた挙句出てきた言葉は、
｢あたしの、喋ってることわかりますか、｣
目の前の狐はあたしの言葉を聞くなり、ぎょっと信じ難いものを見るような目であたしをガン見した。
狐なのに、表情が、…だなんてまた関係無いことを思ってしまって、石状態の狐に、｢あ、あの、｣と、慌てて次の台詞を考える。
｢怪我、大丈夫ですか、｣
我ながら、本当に情けない。
この間にもますます私の目は暗闇に慣れて、その視界をくっきりとしたものにしていたけど、目の前の狐はぬいぐるみなんかじゃなくて本物にしか見えなかったし、あたしの今いるこの現実も夢じゃないと知らしめられるばかりだった。畳の上に座ったふくらはぎの感覚がまじでリアルなのだ。
ただ、夢じゃないと認識すればする程、何も信じたくなくて、起き抜けより頭の回転が悪い。
ふっくらした血まみれの狐は、もはや、カタカタと震える銅像と化していた。まるで喋る人間を初めて見たみたいなリアクションだ。
｢あの、ごめ、｣
｢お、お戯れですか、｣
｢へ？｣
どうしようと困惑に呑まれるまま謝罪が漏れた時、狐が喋った。
いやおま、まじで喋ってんな…、と驚嘆の思いと、言われた言葉の意味が分からなくて間抜けな声が出た。狐は声を出すのもやっとみたいな状態だったけど、あたしの目をしっかり見て言った。
しかも、その目に恐怖と、そして＿＿何でそんな感情を向けられるのか全く分からないけど、底無しの怒りが混ざっている気がした。
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
