刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい-

15 (涙) ページ15

ダムが崩壊したみたいに涙が止まらなかった。

最初はすすり泣きみたいだったそれが、首を知らない誰かにしめられてるみたいにますます苦しくなって、とうとう最後には声を漏らして泣いていた。袖で頬が擦られ過ぎて、痛んだ。

｢っ。ふ、なんで、っ｣
｢…｣
｢ぅっ、う、｣

ここまでくると、さっきまで必死に頭から追い出していた大好きな人達のことを、鮮明に思い出してしまって、もう嗚咽で、過呼吸になるんじゃないかと思った。頭が白んでく、何も見えない、


ずっと一緒にいた家族とも、あんなに、色んなとこ行こうって言ってた友達とも、


(もう会えないってこと？)
嫌だ、絶対そんなの嫌だ。


「〜〜っ」


もう拭うのをやめて、ひとり身を縮こませて、ぼたぼたと、涙も鼻水も垂れ流した。体中の水分が外に出てくんじゃないかと思った。お腹のあたりが痙攣して、どれだけ体勢を変えても苦しかった。

あたしを殺したいと望む程、あたしを恨んでる、この本丸にいる刀剣男士とか呼ばれてる人達。結界とかいう、そんな超能力、マジであったの？って疑いしか持てない、

救いが、なさすぎる。
全然、現実を受け止められない＿＿＿＿＿












どれだけ、そうしていただろう。

泣きすぎて、ついに頭がふらついてきた。
閉じたまぶたに指の背中を押し当てる。頭の、ずっと奥にしまい込もうとするぐらい、強く。



「………はあ、………」



指を離した。水中に、沈み込んだみたいにぼやけた視界。右の頬に、細い筋がいくつも重なって、川のようになった涙の跡を、最後の一滴が伝って、


涙は止まった。
外から、雨の音がした。


顔を上げたら、長机を隔てて、この建物が建ったときから触られていなかったような本棚があった。きっと、前の人は、本を読むのが全然好きじゃなかったんだろう。…どれも汚れてる。

ほぼ虚脱状態で、目についたタイトルを追っていく。『審神者の基本職務』『刀帳』『本丸図解』『歴史修正主義者とその目的』『徹底解説日本史』『時空転送装置説明書』…。

そこに、あたしの知りたい何かがあるわけでもないのに、答えを求めるようにあたしは本棚に這い寄った。『審神者の基本職務』…普通の本に比べたらかなり大判で、立派な黒皮の背表紙がついていた。開いたら、500ページもあった。どのページも、小さい文字でいっぱいだった。


あたしは、表紙から無心でページを繰って、最初に書かれていた文章を読んだ。

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