交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ11)

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今夜も寝る前にスマホに通知が来ていた。

開いてみると中島さんからだった。

ただ今日はメッセージではなく不在着信が入っていた。

これはメッセージじゃなくてかけ直した方がいいだろうなと思い、自分から彼に電話をするというシチュエーションにどきどきしながら通話ボタンを押す。

呼び出し音が数回鳴ったところで

「もしもし、中村サン？」と彼が応答した。

「はい、中村です。こんばんは。
電話出られなくてすみません。今大丈夫ですか？」

「うん、大丈夫。
予定がわかったから直接言いたくて」

と嬉しそうに話す。

「今週末に時間が取れそうなんだ。
土曜日のお昼一緒にどうかなって」

電話越しってなんでこんなにどきどきするんだろうと思いながら、土曜日大丈夫です、と返事をした。

「ほんと？よかった！
場所なんだけど、ランチだけど個室に案内してもらえる店があるんだ。そこでどうかな？」

「考えてもらってありがとうございます。
楽しみです」

「じゃあ場所の詳細は後で送るよ」

「ありがとうございます」

用件は済んだのに彼は電話を切らない。

「……中島さん？」

沈黙を破りたくて呼びかけてみると

「あぁごめんね、黙って。
中村サンはもう寝るの？」

「そろそろ寝ようかなってしてました。
中島さんはまだお仕事ですか？」

こんな他愛無い会話をしているのが信じられない。

「そっか。
俺はさっき帰り着いてゆっくりしてたとこ。
中村サン明日も仕事ならもう寝ないとだね」

話し方が、甘い。

「そう、ですね。
中島さんも睡眠しっかりとってくださいね」

甘い空気にどうしようもない気持ちになり真面目な返事しか出てこない。

「うん、そうだね。
じゃあ…もう切るね。中村サン、おやすみ。
良い夢を」

「はい、おやすみなさい」

切るのを名残惜しいと思ってくれているような雰囲気だった。

甘い余韻のせいで胸のどきどぎが収まらず、その夜はなかなか寝付けなかった。