【A3!】フラれた結果劇団員になりました【男主】 (ページ10)

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詩人と紅茶とページ10

このカンパニーは自宅から近いので、俺はそこから通っている。

寮が満室といっても、一人部屋の人もいるので、たまに誰かしらに呼ばれてお泊まりをする時もある。(大抵なぜか距離が近い)

という訳で今日も俺はバイオリンケースと、差し入れのクッキーを持って足取りも軽くカンパニーに向かっていた...

｢...おや、Aくんじゃないか。｣

｢あれ、有栖川さん。買い物してたんですか？｣

｢そうだよ。いい茶葉のある店を見つけてね...寮に戻ったら早速淹れようと思うんだが、キミもどうだい？｣

｢じゃ、じゃあお言葉に甘えて｣

＊中庭＊

｢わ、いい香りだな...｣

｢そうだろう？このワタシが淹れたのだからね♪｣

もうすぐ春が来るからか、心地よい気温の中庭は居心地がいい。

ふわっとアールグレイの紅茶が香って、なんだか乙女が好みそうな空間だ。

残念ながら男しかいないけどな！！！！

｢あ、このクッキー美味い！持ってきて良かった｣

｢ふむ、美味だね。優しい甘さだ｣

初めて会った時は、こんなに穏やかに話せるとは思っていなかった。

名前しか知らなかったし、逆恨みしそうなぐらいだったのに。

そんな人の綻んだ顔を、こんなに近くで見ていて...胸がじんわりあたたかくなっている。

不思議なもんだよなぁ…

｢くっきー...さっくり...はっ！詩興が湧いたぞ♪｣

ん？しきょう？さきょう？あっそれはヤクザさんですね...

｢有栖川さ...｣

｢舌の上でクリスプ...そして砕けてウィルオウィスプ...ワタシを射止めてハンドクラスプ...！！｣

｢雰囲気ぶち壊しもいい所では！？｣

そういえばこの人は職業が詩人だった。変人だった。これぐらい想定しておくべきだった...！

いや想定しておけるかこんなの！！！！

ちょっとはじめてのシチュエーションにドキドキしたり癒されたりしてた俺の！純情を！返してくれ！！って......

｢うわあああなんでドキドキなんだよおお男だよおおどっちもおおお｣

｢どうしたんだねAくん！ワタシの詩は刺激が強すぎたかな？キミは本当に感受性が豊かだからね...｣

｢はぁ...もうそういうことでいいです......｣

諸々を諦めた俺は、いつか大学でそうしたように、机に突っ伏して呟いておいた。