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* 好 き な も の * ページ38

中島 side



自主トレ前に、引っ越しを終わらせて出て行ったから、自主トレ後に帰る家は必然的に3人でルームシェアする家。空港から車で帰ってきて駐車場に入ると、鍵谷の車が無い。出掛けてるんかな?




エントランスのオートロックも、部屋の鍵も自分の持っている鍵でガチャガチャと2ヶ所開錠して部屋の扉を開けると、人感センサーで電気の付いた玄関と、フワッと温かい空気。




玄関から音がしたのに気が付いたAちゃんが、リビングから玄関に来て、おかえりなさい。ってお出迎えしてくれる。ルームシェアって関係なのに、同棲している感覚に陥る。




9「ただいま」


『自主トレお疲れ様でした!』




お風呂沸いてます!外、寒かったでしょうから先に温まっちゃってください。とリビングに入ると自然に俺の着ていた上着を受け取って消臭スプレーを吹き掛けてハンガーに掛けてくれる。




『陽平さん、夕飯までには帰るって言っていたので、もう少ししたら帰ってくるかと思います』


9「そっか。そしたら先にお風呂入ろうかな」


『はい!そしたら洗濯機回すので、洗濯かごに出しておいてくださいね』


9「洗濯は鍵谷の担当やろ?」


『自主トレ後は特別です』




陽平さんにも、自主トレ後は特別って言って色々したので、卓さんにもですよ。とAちゃんはキッチンに向かい土鍋で炊いていたであろうご飯をおひつに移す。俺の使ってた炊飯器が使われていなくて寂しそう。




脱衣所と洗面所と洗濯機置き場が一緒になっていて、そのドアを閉めて洗濯かごにに、脱いだ服と持って帰って着た洗濯物を放り込んで浴室に入る。




体の芯から冷えていたのか、湯ふーっと湯船に浸かると少しだけ熱く感じるお湯の温度。脱衣所のドアが開く音がして、洗濯機を操作する音がする。Aちゃんだな。と思って話しかけてみる。




9「ご飯、何ー?」


『あじの南蛮漬けですよ。お魚、ダメですか?』


9「……俺、魚食べられん。焼き魚とか光り物は特に」


『ええ!?そうなんですか!?』




大変や!どうしよう……と小声で言うAちゃん。ああ、ごめん。もしかしたら食べられるかもしれん。と言うと、そう簡単に嫌いな物は克服できないですよ。と返事が返ってくる。




『私、卓さんの好きなもの嫌いなものって知らないです』


9「そしたらこれから俺のこと知ってくれたらいいよ」


『そしたら、卓さんは何が好きですか?』


9「野球とオムライスとAちゃん」




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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O  
作成日時:2018年9月24日 20時

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