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* 嫁 感 実 感 * ページ37

鍵谷 side



30「お風呂ありがと」


『いーえー』




お風呂から上がりキッチンでお味噌汁を温め直しているAにお礼を言う。喉乾いたな。と思って俺の家から持ってきた冷蔵庫を開けると、キレイに整頓された室内。ドアポケットに飲み物っぽいボトルがあるから、何だろうと思って作成者に尋ねる。




30「これ、何が入ってるの?」


『青いボトルがお水、緑のボトルがスポドリ、赤いボトルが麦茶です』


30「この水玉のは?」


『昆布と鰹の合わせ出汁なので飲まないでくださいね』




赤いボトルを取り出すと、すかさず出てくる透明なグラス。ありがと。と言ってグラスに移して飲む。その間にAが、温め終わったお味噌汁をお椀によそって、お盆に置く。




『テーブルにお味噌汁持ってってもらってもいいですか?』


30「了解」




お味噌汁を運んでいる俺の後ろを、お茶碗としゃもじを持ったAが付いてくる。炊飯ジャーはキッチンなのでは?と思って、ご飯、キッチンでよそうんじゃないの?と聞いてみる。




『おひつ、テーブルですもん』


30「何、鍋で炊いたの?」


『はい』




さも当たり前でしょ。と言わんばかりの返答。キッチンに置いてあった炊飯ジャーは俺のではないから、きっと卓が持ってきたものなのだろう。あんなに良い炊飯器なのに使わないなんて、もったいない。




『ご飯、どれくらい食べますか?』


30「自分でやるよ?」


『今日だけはサービスですよ』




タダで。と付け加えられる。なら普通にお願い。と。蓋を開けられたおひつからは、お米のいい匂い。鍋で炊いたご飯ならではのおこげも入れてもらう。お茶碗を受け取ってイスに座る。




部屋のこだわりは全く無かったのに、テーブルは3人だから。と三角形のテーブルを熱願したA。今ならわかる。四角だと、どうしても正面に誰もいない人がいる。だから三角形のテーブルだったんだね。




30「いただきます」


『いただきます』




何の変哲も無いお味噌汁と白いご飯がすごく美味しく感じる。いや、丁寧に出汁を取ったり、鍋でご飯を炊いたからなのだろう。これから、こんな美味しいご飯が食べられる。と思ったらルームシェアをダメ元で提案して良かったと心底思う。




ああ、これか。上沢が言っていた、嫁感ってのは。確かにそうだ。何から何まで至れり尽くせり。しかも楽しそうにやってるから、気分が良い。こりゃ、ますます卓が惚れるな。と確信。




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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O  
作成日時:2018年9月24日 20時

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