検索窓
今日:7 hit、昨日:6 hit、合計:214,947 hit

* 優 し さ の 理 由 * ページ49

清水 side


『卓さんに移ったらダメやから、今日は私の部屋でゆっくり休むんやで?』


10「でもAさんは?」


『私は職員の部屋でも、倉庫でも、食堂でもどこでも寝られるから。優心くんは自分の事だけ考えておけばええのよ』




Aさんの使っている部屋で、Aさんのにおいがついた布団に包まれて、Aさんが看病してくれて。病人なのに、不謹慎だけど、嬉しいなんて思ったり。




『ほんならゆっくり休むんやで?』




ちょくちょく覗きにくるからな?ちゃんと寝なバレるんやからな?なんて少しニヤリとして出て行こうとする。Aさん、待って?と言うと、ん?とこっちに向きなおる。




『どしたん?喉乾いたん?』


10「えっと…」


『ん?1人やと寂しいやんな。ごめんな、気が付かんと』


10「いや…」




Aさんに言われた事が図星で何にも言えなくなった俺を見て、ベッドの淵に座って、腰あたりをトントンと一定のペースで叩いてくれる。あ、何か寝てしまいそう。




『みんな、みーんな頑張りすぎや。限界を超えたいって気持ちはええけど、無理はあかん。』




無理したら、その分、体の不調になって返ってくるんやから。徐々に。徐々にペース上げてったらええんよ。と言いながら、ずっとトントンしてくれる。




10「Aさん?」


『ん?』


10「何でそんなに優しいの?」




私、優しいんかな?と言いながら、ふふふっと笑う姿がとてもキレイで、看護師さんって、だから白衣の天使って言われるんだな。って勝手に意味のわからない解釈をする。




『私やって、みんなに優しいわけやないよ?』


10「俺、Aさんが他人に意地悪してるところ見たことないです」


『私やって、嫌いな人は嫌いやし。関わりたくないから優しくなんてせえへんで?』


10「そうなんですか?」


『そうやで、私な自分が好きな人にしか優しくせえへんねん』




どんどんどんどん、まぶたが落ちてくるのが自分でもわかる。ああ、体調悪くて苦しいけど、何か久し振りにグッスリ寝られる気がする。




10「Aさん…」


『ん?』


10「俺、Aさんの事、好きです」


『ありがとう。私も好きやで』




やから安心して寝てええで。とまた頭を撫でられる。たぶん、俺の好きとAさんの好きは違うもんだけど、いつか同じ好きになれたらいいな。と思い、意識を手放す。




.

* 選 手 会 長 命 令 *→←* お 味 噌 汁 *



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
272人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O  
作成日時:2018年8月10日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。