* 優 し さ の 理 由 * ページ49
清水 side
『卓さんに移ったらダメやから、今日は私の部屋でゆっくり休むんやで?』
10「でもAさんは?」
『私は職員の部屋でも、倉庫でも、食堂でもどこでも寝られるから。優心くんは自分の事だけ考えておけばええのよ』
Aさんの使っている部屋で、Aさんのにおいがついた布団に包まれて、Aさんが看病してくれて。病人なのに、不謹慎だけど、嬉しいなんて思ったり。
『ほんならゆっくり休むんやで?』
ちょくちょく覗きにくるからな?ちゃんと寝なバレるんやからな?なんて少しニヤリとして出て行こうとする。Aさん、待って?と言うと、ん?とこっちに向きなおる。
『どしたん?喉乾いたん?』
10「えっと…」
『ん?1人やと寂しいやんな。ごめんな、気が付かんと』
10「いや…」
Aさんに言われた事が図星で何にも言えなくなった俺を見て、ベッドの淵に座って、腰あたりをトントンと一定のペースで叩いてくれる。あ、何か寝てしまいそう。
『みんな、みーんな頑張りすぎや。限界を超えたいって気持ちはええけど、無理はあかん。』
無理したら、その分、体の不調になって返ってくるんやから。徐々に。徐々にペース上げてったらええんよ。と言いながら、ずっとトントンしてくれる。
10「Aさん?」
『ん?』
10「何でそんなに優しいの?」
私、優しいんかな?と言いながら、ふふふっと笑う姿がとてもキレイで、看護師さんって、だから白衣の天使って言われるんだな。って勝手に意味のわからない解釈をする。
『私やって、みんなに優しいわけやないよ?』
10「俺、Aさんが他人に意地悪してるところ見たことないです」
『私やって、嫌いな人は嫌いやし。関わりたくないから優しくなんてせえへんで?』
10「そうなんですか?」
『そうやで、私な自分が好きな人にしか優しくせえへんねん』
どんどんどんどん、まぶたが落ちてくるのが自分でもわかる。ああ、体調悪くて苦しいけど、何か久し振りにグッスリ寝られる気がする。
10「Aさん…」
『ん?』
10「俺、Aさんの事、好きです」
『ありがとう。私も好きやで』
やから安心して寝てええで。とまた頭を撫でられる。たぶん、俺の好きとAさんの好きは違うもんだけど、いつか同じ好きになれたらいいな。と思い、意識を手放す。
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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O
作成日時:2018年8月10日 11時