それはまるで魔法のように【３】 (ページ37)

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＊苦手＊ページ37

西川 side

アリゾナ行きの飛行機内。いつまでも俺の隣、来ないなあ。と思って窓の外を見ていると、右耳のイヤホンを外され、可愛らしい声で、遥輝さんっと言われた。

『アリゾナまでお隣です』

7「何やAか」

『遥輝さんが隣で安心です』

ノートパソコンとiPad、携帯とイヤホン。それに本と筆記用具をあのスヌーピーの手提げに入れて、あとは上の収納スペースに入れると隣にボフッと座る。

『ふかふかだあ』

7「こんなもんやない？」

『私が普段乗っているのはＬＣＣなので、狭いしイスもカチコチなんです』

Aが席に座ったのは離陸ギリギリの時間で、機内アナウンスで＂この飛行機は間もなく離陸いたします。シートベルトをもう一度お確かめ下さい。＂と流れた瞬間、Aの肩がビクつくのを見逃さなかった。

7「飛行機苦手なん？」

『苦手ちゃいます』

7「そおなん？」

『ええ！違います』

座席のシートベルトをしっかり締めて、深くイスに座りなおす。膝にスヌーピーの手提げをしっかり置いていれば、ＣＡさんに、お膝の上のお荷物、前の方のイスの下にお願いします。と注意されとった。

7「めっちゃ動揺しとるやん」

『うるさいなあ』

7「お前、俺、先輩やぞ」

すいません遥輝先輩。と投げやりに言うと無理矢理に寝ようとする。こいつ絶対に飛行機苦手やん。飛行機が動き出すとAの目がバッチリ開いたから、俺は寝たふり。

『遥輝さん、ね、遥輝さん。』

俺の右肩をツンツンしながら起こしにかかる。いつもやられとるから、こういう時、少し困らしたれ。と思い、まだ寝たふり。

『ね、遥輝さん？寝ちゃいました…ね』

どうしよう。と小さな声が聞こえたきり何も言わないAの方を見ると唇をグッと歯で噛み締め、着ているスーツのスカートの裾をギュッと握りしめていた。

7「怖いん？」

そう聞けば、消え入りそうな声で離着陸時、怖いんです。と。唇、切れてしまうから、力抜き？と言うと、今だけ怖いので、手、繋いでください。と涙目ででも強がってる感じで言ってくる。

帰りは絶対、卓さんの隣にさせようと心に決めて、この可愛い可愛い妹の小さな左手を俺の大き目な手で包み込む。

『遥輝さん…離さんといてくださいね』

7「はいはい」

一軍に帯同するって、飛行機移動めっちゃ多いけどこいつ大丈夫なん？と思いながら日本を経った。

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