それはまるで魔法のように【３】 (ページ14)

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＊フィルム＊ページ14

西川 side

８０９号室。こんこん。とノックをすれば中から＂は～い＂と返事が聞こえ、すぐに扉が開く。俺の姿を確認すると、あ、遥輝さん。と。

7「お前、ちゃんと確認してから開けろや」

『えー、この旅館で私の部屋を訪ねてくる人なんて限られてるやないですか』

7「えー。やない」

とりあえず、部屋入ってくださいよ。ここじゃなんなんで。と招き入れられる。Aの使っている部屋は和室やけど１人部屋って感じの小さな部屋。机の上にベースが置いてある。

で、どうしたんですか？と聞かれ、本題を話す。皆んなで部屋で飲まへん？と言うと、ベースのメンテ終わったら、お風呂行こうと思ったったんです。と言い終わるとAの携帯がぴこんっと鳴る。

『あ、遥輝さん、私、この後、優心くんに部屋来ませんか？って誘われとるんです』

それの返事ＯＫ貰っちゃいました。と優心とのLINEのやり取りを見せてくる。てか優心といつ、そんなに仲良くなってん

7「ほんなら優心の部屋にみんな集合って言ってくるわ」

『遥輝さんだけなんちゃうんですか？』

7「卓さん、鍵さん、剛、雄也。で優心、上沢、亮、瑞輝と俺。」

『遥輝さん、どちらの部屋のメンバーなんですか？』

7「くじ外れて、俺１人部屋」

『……』

7「……なんか言えや」

『西川どんまい』

はあ？お前なあ！と言うけど、そっちのけでベースのメンテを始めた。Aの隣に座れば、まだベースから剥がされていない新品の象徴であるフィルム。

7「…えい！」

『あーーー！え？遥輝さん！？』

ベリベリッとAが目を離した隙にフィルムを剥がしてみる。ほんの出来心、で。何てことしてくれてるんですか！？今まで剥がさずに大切に大切にしてきたのに…。と大粒の涙を流すA

7「え？そんな？ごめんな」

『ギー太のフィルム…』

7「ギータ？」

『ベースの名前です！！唯ちゃんの真似してギー太って名前なんです！』

いつか剥がすんやからいいやんか。と言えば、火に油を注いだらしく、そういう事やないんです！もう遥輝さんキライ！涙がボロボロ出てくる目を服の裾でゴシゴシ擦る。

7「そんな泣くと目、腫れるで？」

『誰のせいですか！』

もう、お風呂入ってきますから、私の部屋から出てください！とグイグイ背中を押される。先に優心くんの部屋に行っててください。お風呂入ってきますから！とプリプリ怒りながらAは大浴場へ向かった。

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