◇25.不穏な爪痕�� ページ37
「───隊長…ッ！」
まさに、飛び起きるという表現がぴったりな目覚め。
思わず先程の悪夢に対しての絶叫を部屋に響かせ、Aは上体を起こし、虚空へ手を伸ばしたなんとも滑稽な姿勢でハッと思考を現実に引き戻す。
額にも背中にもじっとりと汗が浮かんでおり、浅くなった呼吸を整えながら、乱れた髪を片手でかきあげる。そして、一呼吸。
「………クソｯ！」
最低な気分だ。
Aは怒りをぶつける様に悪態をつき、掛布団を殴りつけた。バンッ、という音と共に僅かに埃が宙に舞う。それと同時に、額の汗が頬を滑り落ち、Aは逆立つ心を宥めるべく、苛立ちを隠しもせず手探りでシガレットケースを探す。まだ焦点がぼんやりしており、硬い鉄の感覚を探し求めて指を這わすほかなかった。
すると、意外にもこの部屋にいるのは自分だけではなかったようで。聞きなれた声が、お目当てのものをチラつかせる。
「…探してるのは、コレかい？」
「……あﾞ？」
自分とほとんど変わらない声質でありながら、溢れでんほどの優しさを持ち合わせた声を耳が拾う。まさに"イイコちゃん"の雰囲気を醸し出すその声の主は──
「…ﾁｯ…………夜」
「そんな怖い顔しないでよ。
あと。起き抜けに煙草は辞めてっていったでしょ。身体壊すよ」
「んだよ、お前には関係ないだろうが」
「関係あるよ…僕は君のお兄ちゃんなんだから」
心配気な声は、浅葱色の目を細めると、手に持ったシガレットケースを胸ポケットにしまう。
それに不服そうに顔を歪めるAだが、反抗するのも馬鹿らしくなり、大人しくシガレットケースが遠くなる様を見ていた。今は取り返すことに労力を使う気にもなれず、はぁ、とため息を漏らした。
「……愛弟を一本背負いで窓から放り投げる奴が、今更何を言うか。そもそも、歳が変わらんのだから、兄だの弟だのは大差ないだろ」
「それに関しては…悪かったと思ってるよ。
でも、君が許してくれるならば…まだ君の兄でいさせてはくれないか。君は少し奔放なところがあるから、心配なんだ」
「……はっ…お節介野郎め」
不機嫌を呈し、片肘をついた姿勢でAは顔を背ける。雲ひとつない晴れ空が目に入り、霞んだ視界が少しずつ晴れる。心地よい風が清楚な白いカーテンを揺らし、その流れのままAの髪を撫でると、大して手入れもしていない割に靱やかな髪は、されるがままに靡く。
その優しい動きが、お節介焼きの兄のようで、居心地が悪くなる。
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はざくら(プロフ) - とても文が綺麗で大好きです！ (2019年10月13日 10時) (
レス) id: 86be810755 (このIDを非表示/違反報告)
ルーカス - 楽しみにしてます！！ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 9beb8a0104 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 周りに同志がいなかったのもで…ちょくちょくコメントします。本当に絵が好きすぎなので。 (2019年4月9日 20時) (レス) id: 0510066ef5 (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - 夜さん» 某サイトも見て下さり、ありがとうございます。絵の方は、かなり捏造多めですが、見て下さり嬉しいです！励みになります ！私も白最推しなので、同志が居て下さり心強いです:-)笑 (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - ルーカスさん» 読みやすいとのお言葉、嬉しいです…！はい、ご期待に添えるよう、精進して参ります :-) (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五夜草 | 作成日時：2019年2月22日 12時
