◇19.多福�� ページ29
そんな最中、その沈黙は第三者の声によっていとも簡単に破られる。
「──失礼致します、旭陸軍大将」
無機質な扉をノックする軽快な音が鳴り響き、不意に耳に通ったその音に室内のふたりは間を置かずに反応する。
「南部駐屯部隊の軍備についてご相談したいことが───ｯ!?
ひ、ひとらんらん司令…！！」
A率いる第1部隊の兵士が、部屋に足を踏み入れるのが先か、ひとらんらんを見るなり素っ頓狂な声を上げるのが先か…
まさか最高司令官であるひとらんらんが、室内に居るとは思わなかったのだろう。慌てて敬礼をする姿は、その体格のいい帝国軍人の魁偉な見た目に全くと言っていいほど似合っていなかった。
周りに較べ少々青いが、さりとてAも上級士官。そんな下士官の様子に、Aは元から不機嫌そうな目をさらに歪めて、厳しい声で叱責する。
「…貴様、敬礼が遅い！
俺に対してならいざ知らず、隊長に対しなんと不埒な──」
「落ち着いて、旭くん」
僅か1秒にも満たないくらいだが、反応が遅れた士官に対し、思わず身を起こして掴みかかりそうになるのを、ひとらんらんに制止される。
…本人も無自覚だが、怒りのあまりか一人称が公私混同している事にも気づかない程。
「も、申し訳ございません！」
「いーよ、そんなこと。気にするな。
──ね、旭くん」
「…しかし」
「…ね……？」
一見穏やかな声音だが、その中には明らかな牽制と威圧が含まれていた。
Aよりも明らかに歳上な士官が、震えながら頭を深深と下げている光景に、少し不憫になったのだろう。ひとらんらんは、ベッドから身を乗り出したAをもう一度ベッドへ腰を下ろすように促すと、Aも逆らう訳にはいかず、その動きに甘んじる。
「君は自分にも厳しいけどさ、
それを他人に押し付けるのは傲慢じゃない？」
「…しかし、隊長…」
「勿論、君が俺の事を思って言ってくれたのは分かる。 でも、もっと肩の力を抜くことも大切じゃないかと思う」
けして責めるわけでもなく、優しい声音で諭すひとらんらんの柔らかい表情に、Aだけでなく、萎縮し切っていた下級士官も自然と張りつめた緊張の糸が緩む。
「ずっと頑張りっぱなしだったら、疲れるでしょ？ 仮にも君は休養中だしね」
「…そう、ですね。」
ひとらんらんはその返事を聞くと、満足げに「いい子」とまたAを幼子の様に扱うのだった。
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はざくら(プロフ) - とても文が綺麗で大好きです！ (2019年10月13日 10時) (
レス) id: 86be810755 (このIDを非表示/違反報告)
ルーカス - 楽しみにしてます！！ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 9beb8a0104 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 周りに同志がいなかったのもで…ちょくちょくコメントします。本当に絵が好きすぎなので。 (2019年4月9日 20時) (レス) id: 0510066ef5 (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - 夜さん» 某サイトも見て下さり、ありがとうございます。絵の方は、かなり捏造多めですが、見て下さり嬉しいです！励みになります ！私も白最推しなので、同志が居て下さり心強いです:-)笑 (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - ルーカスさん» 読みやすいとのお言葉、嬉しいです…！はい、ご期待に添えるよう、精進して参ります :-) (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五夜草 | 作成日時：2019年2月22日 12時
