◇16.多福�� ページ24
＊
目を開いて真っ先に飛び込んできたのは、蜘蛛の巣一つない、清潔を保った白い天井だった。
(…此処は…)
医務室、か。
重い瞼を無理やり上げると、ずっしりとした疲労感、倦怠感が鉛でも乗せられたかのようにのしかかり、身体はベッドに縫い付けられる。
西洋人に比べ、基本的に小柄な東洋人であるAには少し大きすぎる程のベッドの上で、先程までの記憶の意図を辿るが…途中、あまりの疲れに、再び瞼を閉じようとした。
その時。
「気がついた？ 旭くん」
ベッドの傍らに腰掛け、半ばのぞき込むような形で声の主、ひとらんらんがAを心配そうに見つめる。
反射的に起き上がり、顔には一瞬で熱が集まる。
「…たっ、隊長…！？」
突然のハニートラップ(というのはあくまでAの観点である)に、焦りのあまり情けない声で吃ってしまう。
心配気な視線が絡むと、魔法にでも掛かったように体が硬直し、心臓がバクバクと忙しなく鳴る。
──想像したことがあるだろうか。想い人の顔が口付けでも出来るほどに近く、蕩けてしまいそうな優しい視線を送られ、更には凜然かつ艶やかで、何処か色香を帯びた声で労わられるのを。
心配を膜張った濡羽色が今度は一転、Aの慌てふためく様子に安心したように細められる。
「よかった──元気そうだね」
安堵するひとらんらんを他所に、Aは己の明らかな態度にこの下心が露見してしまったのでは無いかと気を揉んだが、それは杞憂だったようだ。当の本人はそんな事を知る由もなくAに手を伸ばすと、頭を撫でる。
「あの、隊長──」
「…ごめんね、腕痛いでしょ？
ゾムにはちゃんと言い聞かせたから」
許せとは、言わないけど。と、ひとらんらんは困ったような表情を滲ませながら小さく笑う。
その様子にさえ、心臓はひどく暴れて、きっと顔なんかは情けなく赤面しているのだろう。Aは頭を撫でられながら、羞恥に俯き悶える。
「い、え…これは完全に私の不徳の致すところです。本来なら貴方を御守りする立場であるというのに、目の前で膝をつくなど…」
「ふふっ、真面目だなぁ。
文句の一つや二つ、言ったっていいのに」
「…そういう訳には…」
「いーよ、俺の前では
──だってまだ旭くんは…子供じゃない」
そう言いながらひとらんらんが撫でる手を止め、Aの手を握る。
「…っ」
「もっと我儘を言っていいんだよ」
濡羽色を細めて笑う、聖母の如く穏やかな笑顔にまたもやAは悶絶した。
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はざくら(プロフ) - とても文が綺麗で大好きです！ (2019年10月13日 10時) (
レス) id: 86be810755 (このIDを非表示/違反報告)
ルーカス - 楽しみにしてます！！ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 9beb8a0104 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 周りに同志がいなかったのもで…ちょくちょくコメントします。本当に絵が好きすぎなので。 (2019年4月9日 20時) (レス) id: 0510066ef5 (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - 夜さん» 某サイトも見て下さり、ありがとうございます。絵の方は、かなり捏造多めですが、見て下さり嬉しいです！励みになります ！私も白最推しなので、同志が居て下さり心強いです:-)笑 (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - ルーカスさん» 読みやすいとのお言葉、嬉しいです…！はい、ご期待に添えるよう、精進して参ります :-) (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五夜草 | 作成日時：2019年2月22日 12時
