◇8.気に食わない�� ページ16
「いやー、にしても…お前目付きわっるいな」
ゾムが此方を覗き込みながら、足に力を込めた。
踏みつけられた手の甲をグリグリと痛め付けられて、Aは痛みに顔を歪ませる。
「…っぅうﾞ…あﾞ」
暫くすると、それに飽きたのか足が離れて、痛みから解放されたのもつかの間。服の胸元を荒々しく掴まれて、つま先立ちの状態まで引き上げられる。
「なぁ旭くん？聞いてええ？」
「…っぐ、なん、ですか…ッ」
…まずい。非常にまずい。
先程からろくに呼吸を整えられず、酸素不足か頭がクラクラする。腕さえ無事なら、多少なりとも抵抗くらいは出来たろうに。──あの愚兄め。
値踏みするような眼光がぼやけ始めて、いよいよ気が遠くなり始めた…とともに、脅威と謳われる彼が無邪気な笑顔のまま言葉を発した。
「…お前、ひとらんのこと、好きなん？」
「……は」
ぶわり、
焦燥と同時に図星をつかれて顔が紅潮する。
──そう、何を隠そう、Aは隊長であるひとらんらんに…想いを寄せている。
…いやでも待て。何故この人はその事をあたかも知っているように聞いてきたのか。
「…な、なっ」
「あれ、否定せぇへんのや？」
「っなぜそんな、ことを、お聞きに」
なけなしの力を振り絞り、足を宙に向けて思いっきり振り下ろす。脚力には幾らか自信があったため、その反動を利用して身を翻す。
「…お」
宙で一回転して、着地をする。
ずきりと腕が痛むのに耐えつつ、キッ、と目の前の人物を睨みつける。まぁこの行動は、圧倒的な力量差のある眼前の相手には、なんの効果も与えない事は分かっているのだが…軍人の癖みたいなもので。
いとも簡単に相手の拘束を逃れたのは、おそらくゾム自身、そこまで捕らえておく必要性を感ず、手を抜いていたのだろう。
少しも驚く素振りを見せないまま、ゾムが笑う。
「あはっ、良かった。
このままやったら"うっかり"殺してまうとこやった」
「…げほっ、それは、御免ですね…ッ」
(…こっちは死ぬ気だってのに随分余裕だなオイ…)
心の内で小さく舌打ちをしながら、思えばこのサイコ幹部様は自分と歳がさして変わらなかったのではなかったか、と脳の片隅で考える。
(……なんつー鬼才…)
その年で軍トップクラスの幹部とは。恐るるに足る。
ふと見上げると、ゾムは先程腕ごと踏みつけた刀をAに投げ渡す。
「んふふ、旭くん、もっと遊ぼ」
その笑顔は脅威という異名に相応しく。身の凍るような恐怖感が全身を駆け巡った。
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はざくら(プロフ) - とても文が綺麗で大好きです！ (2019年10月13日 10時) (
レス) id: 86be810755 (このIDを非表示/違反報告)
ルーカス - 楽しみにしてます！！ (2019年4月13日 14時) (レス) id: 9beb8a0104 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 周りに同志がいなかったのもで…ちょくちょくコメントします。本当に絵が好きすぎなので。 (2019年4月9日 20時) (レス) id: 0510066ef5 (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - 夜さん» 某サイトも見て下さり、ありがとうございます。絵の方は、かなり捏造多めですが、見て下さり嬉しいです！励みになります ！私も白最推しなので、同志が居て下さり心強いです:-)笑 (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
十五夜草(プロフ) - ルーカスさん» 読みやすいとのお言葉、嬉しいです…！はい、ご期待に添えるよう、精進して参ります :-) (2019年4月7日 14時) (レス) id: 82b1fa153c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五夜草 | 作成日時：2019年2月22日 12時
