第139話 苦悩滴る苛立ち ページ48
．
気付けばもうスリザリン寮への隠し扉に到着していて、セブルス君がスラスラと合言葉を唱えるのを彼の後ろで聞いていた。
ひやりとした空気に手足が冷えていくのを感じて、それに同調した心がさらに深みへ沈んでいった。
そのまま男子寮へと足を進めるセブルス君を見送る。もう遅い時間であるし、明日もまた授業がある。このまま話し込むこともないかと思って、言葉を少し交わして別れた。
セブルス君が見えなくなって、私はしばらくそこに縫い付けられたように突っ立っていたが、ふと思いついたようにふらふらとソファーへと歩み寄り、乱暴に腰を落ち着けた。スプリングの軋む音を聞きながら足を組む。
「…………ッチ！ ああクソ…ッ」
舌打ちはごく自然に漏れ出た。私は人目がないのをいいことに苛立ちを隠そうともせず、内心で自分に対する酷い悪態をこれでもかとつきまくった。
なんで私はこうなんだ。なんでうまくいかない。校長に窘められて、セブルス君に気を使わせて…なんて情けない。情けなくていっそ消えてしまいたい。私には一体何が足りないというのだ。あとは何をすればいい？何をすれば生き残れる？
今の冷静さを欠いた頭では、自分を抑えようにも抑えられず、むしろどんどん熱を帯びていった。
セブルス君と同じ時に自室へ帰らなくて良かった。ベットの中で毛布に包まってしまえば、おそらくもっと醜態を晒していたことだろう。別にお互いを居ないものとして扱っているルームメイトしかいないのだから晒したところでどうとなる事もないのだが。
狭いところにいるほど人は閉鎖的になる。考え方が一辺倒になる。何もかもを否定した結果、心に栓をする。今の私がそれをすれば、閉心術など夢のまた夢。そんな不器用な心のままで、どうして複雑な術を操れようか。閉心術とは、なにもただ心を閉じればいいというわけではないのだから。
だが、肝心のそれがわからない。何が足りないのかが分からない。心の中にある不安が邪魔をしてくるのだ。校長を味方につけ、確実にこの手の力は増しているのに、一体何の不安があるのか。その不安の種すら分からない。いや、本当は分かっているのかもしれない。分かっていてなお、私は…＿＿＿
その時、寝室へと続く階段の奥から、何かを落としたような音が閑静な空間の中に響き渡った。
.
第140話 その邂逅は意味を持つか→←第138話 不機嫌の正体は何処に
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 620人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しう - ネームが、バグってしまってるんですけど… (2022年10月22日 9時) (
レス) @page1 id: f32468df16 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 劉嘩さん» ありがとうございます！自分では面白いのか？と手探りで書いているのでそう言って頂けると嬉しいです。 (2019年7月31日 0時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
劉嘩 - 一気読みしちゃいました。面白かったです!!これからも無理をしない程度に頑張ってください!!応援してます!! (2019年7月29日 17時) (レス) id: 8c95e35653 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - えぬさん» ありがとうございます！最近更新停滞気味で申し訳ありません…これからも宜しくお願いします。 (2019年6月23日 18時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ(プロフ) - 今日この作品を見つけて一気読みしてしまいました…！！これからも頑張ってください！！ (2019年6月16日 19時) (レス) id: 56c93dfa56 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜京目 | 作成日時：2018年12月5日 2時
