第106話 小さなのぞみにさよなら ページ14
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神格化しているあの人の話をして会話が盛り上がっている時の両親は身の毛がよだつほど気持ちが悪い。両親は私が小さかった頃はよくあの人の話を話して聞かせた。我が子にも自分の好きなものを知って欲しかったのかもしれない。
熱に浮かされた様な蕩けた表情であの人がいかに素晴らしいお方かを甘く囁くのだ。内容はもちろん美化されまくっている。両親から見たあの人はそんな感じなのか、という淡白な感想しか湧かなかった。
散々あの人の賛美を洗脳の様に聞かされたけれど、伝わってきたのはあの両親をあんな風にした優れたカリスマ性だけで、それの何処がいいのかついぞ分からなかった。
私が大きくなってからはあの両親を避けるだけの術が身についていたので、必要最低時以外は部屋に引きこもってやり過ごした。何度も同じ話を聞かされるのも辛いのだ。素直でも可愛くもなくなった娘が自分に関心がないのを感じた母は私にも態度で示す様になった。母親らしい温かみがない母と、娘であると微塵も思ってはいない無愛想な娘。母は貴族の愛想を持ち合わせているだけましだろう。人の気持ちに鈍感な父は蚊帳の外で何も知らずただずっと笑っていればよい。
ただ、危機感はあった。
死喰い人になりたくてもなれない両親と、将来死喰い人になれるであろう魔力を持った私…結果は火を見るよりも明らかだった。
両親は言葉にこそしないが腹の中では私が死喰い人になるのを望んでいる。
この世に生まれてからずっと一緒にいるのだ。顔を見ればわかる。
今までは私がまだ年齢的に未成熟だと判断されていたから良かったものの、四年生になった今、いつあの人の前に突き出されるか分かったものではない。
死喰い人になるくらいならスクイブだった方が良かった。前は魔法なしで生きていたのだ。それくらい痛くも痒くもない。
死喰い人にはなりたくない。もしその時が来たらどうやって逃げようかと逃避行を空想しては過ぎる日々の中で、出会ったのがあの2人だった。
彼らは私にあたたかさを教えてくれた。優しさを与えてくれた。生きながら死んでいた私をこの世に留めてくれた。そんな2人がいたから、私は今も笑えているのだ。
だから、もう消えてくれ。
私はもう大丈夫。アンタに縋ったりしないよ。
記憶の中にお帰り、そしてそのまま出てこないで。
過去の幻影は、過去にあるべきだ。
なあ、アンタもそう思うだろ。
鏡の中の私が、小さく頷いた様な気がした。
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第107話 鈍感な貴女は知らない→←第105話 お久しぶりね以前の私
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しう - ネームが、バグってしまってるんですけど… (2022年10月22日 9時) (
レス) @page1 id: f32468df16 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 劉嘩さん» ありがとうございます！自分では面白いのか？と手探りで書いているのでそう言って頂けると嬉しいです。 (2019年7月31日 0時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
劉嘩 - 一気読みしちゃいました。面白かったです!!これからも無理をしない程度に頑張ってください!!応援してます!! (2019年7月29日 17時) (レス) id: 8c95e35653 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - えぬさん» ありがとうございます！最近更新停滞気味で申し訳ありません…これからも宜しくお願いします。 (2019年6月23日 18時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ(プロフ) - 今日この作品を見つけて一気読みしてしまいました…！！これからも頑張ってください！！ (2019年6月16日 19時) (レス) id: 56c93dfa56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年12月5日 2時
