第88話 終末は程遠い ページ42
．
「＿＿って事が昔あったんだけど、あの時の少年はセブルス君？」
「ああ、おそらくな」
帰省の汽車の中で、リリーが席を外した間にセブルス君に蘇った記憶の確認を取る。
なんとなく、なんとなくリリーには言い辛かった。まあリリーは当事者は当事者でも事情を知らない訳だから話しても大した返事は得られまい。
そんな建前で醜い独占欲に蓋をした。
私の記憶違いではなかったようでホッとした。雰囲気も目も、あの少年はセブルス君だった。制服屋での既視感は間違っていなかった。
同じくらいだと思ってはいたが、幼い頃一度だけ会った人と自分が同じ年で、同じ学校で再開できる確率は一体どれくらいなのだろうか。
考え始めればキリが無い。それ程の稀少な運命に、頭を垂れて礼を言いたいくらいだ。
あの時のことを思い出せば思い出すほど私は子供らしくないことを散々に宣っていて、自身のことながら苦笑が口の端から漏れる。
いやしかし、リリーと無事友達になれたようで良かったね。
あれ程の大口を叩いておいて上手くいきませんでしたなどという結果になれば私はセブルス君に一生顔向けができなかったかもしれない。
「僕もすっかり忘れていた。そういえば、Aはどうして今になって思い出したんだ？」
「いや、なんとなくね」
「そうか。……Aはあの頃から変わっていないんだな」
「え？子供っぽいって事？」
「そうじゃない…」
呆れたような声色とは別に、セブルス君には珍しく、やけに優しげな顔をしていた。
…セブルス君も懐かしく思っているのだろう。
きっとそうだ。
リリーが帰ってきたところで、この話は打ち切られた。セブルス君がリリーに菓子は何を買うつもりなのかを聞いた。あからさまな話題転換だ。
セブルス君がリリーに話そうとしなかった事に首をかしげる。だが大した理由はないだろうと気に止めることはなかった。
結局、セブルス君が何故あんな顔を私に向けたのかは分からないままだった。
汽笛の音が聞こえて振り返ると、すでに汽車は動き始めていた。外から窓を覗けばすっきりとした駅内が見えて、それは少し寂しげだった。
見ろ、私は無事乗り切ったぞ、と心の中で叫んだ。
たかが一年、されど一年。短いようで長かった。
実家に引きこもっていた頃とは比べ物にならない濃い日々だった。
心配事もある。気掛かりもある。
しかしひとまず置いておこう。
再びこの汽車に乗るその時まで。
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
