第83話 隠れ蓑の共有 ページ37
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…彼は少々鋭いところがある。己の苗字を嫌っているだなんて、初めて言われたのだ。少なからず当たっているのが腹立たしい。まあ、不仲説が浮上しようと信憑性はないだろうしどうせ両親が揉み消すのだから困ることは特にないのだが。
ただ、不愉快だ。ずけずけと人の懐へ入り込もうとする態度も、人に好かれやすそうな笑顔を見せる癖にこちらの出方を伺っているのも。
「いい加減私みたいなのを付け回すのにも飽きただろうと思ってたんだけど」
「飽きる？どうして？」
ブラウニーに齧り付くルーピンがきょとんとした顔をしてこちらを見た。その能天気な顔にカチンときて嫌味を吐く。
「あら、ポッター達と連む位だから貴方も刺激的な日々を求めてるんだと思っていたわ。私みたいなつまらない女じゃ役不足じゃない？」
「…そのままの君は嫌いじゃないけど、その君は好きじゃないよ」
「……………それ、この前も言ってたね」
幾分か低い声に怖気付いた訳ではないが、口調を素に直した。
元より本気で煽っていたわけではないし、保健室での出来事がどうも糸を引いている。彼という人間が全く読めない。
あの時の言葉を撤回することはどうしてもできなかった。
私は意外に愛されたがりだったのかもしれない、だなんて吐き気を催しそうな考えを即座に否定した。
女々しすぎる。せめて…寂しがりやに留めておきたい。
けれど、彼の“嫌っていない”という言葉に胸が暖かくなったのも揺るぎない事実なのである。
彼は私に嘘はつかないものの、隠し事はあるのだろう。勘などではない。仕草や雰囲気から何となく察した。
彼はいつも気を張っている。同年代と比較すればその差は顕著だ。
そして彼は怯えている。それが何かは分からない。隠し事がバレるのが怖いのか、周囲の目が怖いのか、検討もつかない。
それが当たり前なのだ。寧ろ、人心掌握に長けている人の方が余程恐ろしいだろう。自分の何もかもが暴かれるなんて、どれほど最低な気分になれるのかは想像に容易い。
「……A、あのさ」
「何？」
誰にだって隠し事の一つや二つある。
彼はきっとそれが人より大きいのだろう。
別に、無理に暴く気も探る気もない。興味もあまりない。
「その……またここに来てもいい、かな」
俯いたまま珍しく控えめに尋ねるルーピンに、私は紅茶のお代わりを注いでやった。
何も言わなかったが、それだけで十分だった。
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
