第78話 霧散した怒りの矛先 ページ32
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沈黙がこの場を流れた。
ルーピンは酷く落胆した様子だったが、むしろ困っているのは私の方である。
その時、タイミングよくカーテンが開かれた。
そこには鬼の形相をしたマダムが仁王立ちで私たちを見下ろしていた。
「貴方達ッ！何を保健室で騒いでいるの！！病人は安静にしてなさい！！」
ゴブレットを片手にその豊かな声量を発揮し私たちを叱り飛ばすマダム。窓が割れるかと思った。
マダムに軽く謝罪をすれば、マダムはまだ怒った顔を緩めはしないものの許してくれた。
ルーピンに持っていたゴブレットを手渡し、他の患者の治療をするべく別のベッドへ歩いて行った。
「…僕これ飲むの…？」
「体調不良は自己責任だろ、と言いたいところだけど……さすがに同情するよ」
禍々しい色をしたゴブレットの中身を覗き込んでは悲惨な顔をしたルーピンにそう声を掛ける。
液体と個体の半ばともとれるドロリとした質感は、さぞ喉触りが悪いことだろう。…多分これは舌に残るやつ。
「……」
「ほら、ぐいっといけ」
「〜ッ！！！」
ゴブレットの縁に口をつけたものの、そこで一歩踏みとどまる彼を後押しした…つまり無理矢理ゴブレットを傾けた。
中身が溢れるのを恐れて咄嗟に口を開けたのだから、当然薬は口へと流れる。彼は何度もえずきながらようやく薬を飲み干した。
顔をしかめる彼に水が入ったコップを渡す。これはマダムが予め用意してあったものだ。やはり彼女は優しい人だ。
「ケホッ！ ああ不味かった！君は思っていたよりも乱暴だね…」
「…マダムには貴方の監督を任されているから」
「わかったわかった……大人しく寝ているよ」
「うん、そうして」
マダムは見事に険悪な空気を拭い去って行った。何だか気が削がれてしまったので、今から蒸し返すこともしなかった。
ベッドに寝転び布団を胸上まで被るルーピンを尻目に、私はゴブレットを盆に乗せていた。
すると、彼は背中を向けている私に向かってポツリと呟いた。
「僕の負けだよ…今回はね。君の言う通りにする。でもそれは君を見捨てたって事じゃないから」
「…何もしないでよ」
「それはどうかな」
振り向いた私に悪戯っぽく言うルーピンに頭痛がする。もう何を言っても無駄なのだろう。お互いに。彼もそれが解って譲歩した。だからって私は譲る気はさらさらないが。
…彼には動いて欲しくなかった。現状維持で十分だったから。
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亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
