第35話 この仔猫、侮り難し ページ35
．
「……そっ、かぁ」
私の声は、掠れていたが確かに音を孕んで耳に届いていた。それなのに次の言葉が出てこない。何か言おうとしているのに、頭の中はぐわぁんという効果音がついてきそうなほどぐちゃぐちゃだった。彼の言葉に平常心を保てなかったのだ。現に、さっきまではあんなにお喋りだったのに一度揺さぶられればこのざまだ。
彼は、気づいていたのだ。私の雰囲気だけでなく、その理由までも。
理由は言わずもがな、寮でのルームメイトとの一件であろう。スリザリンの結束が強いのは長所だが、それが今ここで仇となった。人の口に戸は立てられずというが、いっそのことあの場で全員の口を縫いつけてしまえばよかったかもしれない。
そうすれば彼に気を使わせることもなかったのに…！
「……セブルス君、私…」
「寮の奴らにAがああ言ってくれたことが何より、その…嬉しかった。でも、僕のせいでAが孤立してしまった…。しかもAを僕のことに巻き込んでしまった…ッ、すまなかった…」
「…でもね、…いや、ううん。私の方こそごめんなさい。私の方が、セブルス君に何も言ってこなかったのね。発端は、私だった」
「…これからは、お互いにへんな隠し事はやめないか？」
「そうだね、勘繰り合うのも疲れるだけだ」
私がやっと微笑むと、彼も微かに口元を緩めた。
彼がようやく自分のカップに口を近づけるその時、私はふと顔を上げて言った。
「そうだ、もう一つ教えてあげるわ。これ、私の大好きちゃんなの」
私は悪戯っぽい顔でブラウニーをひとくち食べた。
セブルス君はさっきの話とのギャップにぽかんとしていたけど、すぐに噴き出して小さく笑った。
「君はミルクティーも好きだろう？メニューにあったら必ず飲んでいるな」
「……よく見てるね。当たってるよ」
してやられた。私は悔しい気持ちで少々赤くなった顔を隠すように紅茶をあおった。彼の方が一枚上手だ。
彼は意地悪そうににやにやしていた。彼の年相応な笑顔は、なんだか久しぶりのような気がした。
「ミルク、入れるか？」
「やめとく、このままが一番美味しいよ」
二人の間に会話は少なかったけど、それが不思議と心地よかった
−−−−
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by亜京目
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亜京目(プロフ) - キュウさん» いえいえ、お気になさらず。よかったらこちらの小説もどうですか(笑) (2019年5月3日 22時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
キュウ - すみません！！コメントする小説間違えてしまいました！！ (2019年5月3日 22時) (レス) id: b33addfcfc (このIDを非表示/違反報告)
キュウ - ちょくちょく夢主の名前と苗字？が反対になってますよ〜 (2019年5月3日 21時) (レス) id: b33addfcfc (このIDを非表示/違反報告)
青鯖(プロフ) - 亜京目さん» ようこそ文スト沼へ( ^ω^ ) (2018年10月24日 20時) (レス) id: c8be7af1d7 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 青鯖さん» 最近友人に漫画を借りて一から読みました。文ストは初心者です。まんまと沼にハマりました… (2018年10月24日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜京目 | 作成日時：2018年6月18日 15時
