第31話 水は枯れども天は濁る ページ31
．
右頬の痛みが消えるのを待たずして、それは訪れた。
次の教室に向かうため、廊下を歩いていると、いきなり頭上から水が降って来たのだ。まさにバケツをひっくり返したような、そんな比喩が相応しいくらいの滝のような水だ。氷のように冷たい水だった。
人為的なのは、誰がどう見ようと明らかだった。
「………」
私は呆然としていた。視線を下げると、無残な自分の姿が水溜まりに写っている。
制服も教科書も羊皮紙も、すべてがびしょびしょだ。昨日遅くまでかかって、今日の授業でやっと提出するはずだったレポートは、滲んだインクがぼやけてとても読めるような状態ではない。
その時、背後から喜色を帯びてやまない声が聞こえた。
また、それが聞き覚えのある、男子生徒の声だったものだから、私は無意識に体を硬くしていた。
「感謝してくれよ？陰気臭いベトベト髪を綺麗に洗い流してあげたんだからさ！」
「お前にゃそれがお似合いだよ！」
「ポッター！ブラック！いい加減僕につきまとうのはやめろ！！」
「つきまとうなんて気持ち悪い言い方をしないでほしいな、スニベルス。僕はただ、ジメジメしたスリザリンの陰気な空気をこっちにまで持ち込んで欲しくないだけさ！」
「黙れ！その名を呼ぶな！」
驚いたことに、セブルス君はこの２人とホグワーツでの関わりがあるらしい。それでも関わりといっても、この会話を聞いていれば良いものではないことが嫌でも分かった。
いつの間に…
ここホグワーツにおいて、私が一番親しくし、また一番長くいるのがセブルス君だ。それでも何となく１人になりたい時やプライベートな事もあるから、まさか四六時中くっついているわけではない。だから、その隙にセブルス君がこの悪童たちに目を付けられたと考えることが妥当だろう。
「まったく、リリーが君らみたいな奴らにどうしてあんなに構うのか分からないよ」
「貴様らに関係ないだろう！」
「＿ちょっと、」
口を挟むつもりなど、毛頭なかった。
さっきから冷静に分析しているようだが、こう見えて結構腹が立っている。こんな格好で授業にはとても出られない。一瞬で服を乾かすような魔法は、あることにはあるだろうけれど私はまだそれを習得していない。もう授業に遅刻するのは確実だろう。
そうだ。私は怒っているのだ。けれど、ただ怒っているのではない。
私の今の状態は、冷静に怒っているというべきであろうか、それが一番語弊がなかろう。
．
第32話 食い違って駄目になって→←第30話 戯れから逃げ出したい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 425人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜京目(プロフ) - キュウさん» いえいえ、お気になさらず。よかったらこちらの小説もどうですか(笑) (2019年5月3日 22時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
キュウ - すみません！！コメントする小説間違えてしまいました！！ (2019年5月3日 22時) (レス) id: b33addfcfc (このIDを非表示/違反報告)
キュウ - ちょくちょく夢主の名前と苗字？が反対になってますよ〜 (2019年5月3日 21時) (レス) id: b33addfcfc (このIDを非表示/違反報告)
青鯖(プロフ) - 亜京目さん» ようこそ文スト沼へ( ^ω^ ) (2018年10月24日 20時) (レス) id: c8be7af1d7 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 青鯖さん» 最近友人に漫画を借りて一から読みました。文ストは初心者です。まんまと沼にハマりました… (2018年10月24日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜京目 | 作成日時：2018年6月18日 15時
