パープルベルベット《JUN》 (ページ11)

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１１．怪しい人ページ11

こんな朝に誰だろうと思い、それどころじゃないのにと思いながらも玄関に行く。

ドアスコープを覗くと、深くキャップをかぶり、メガネをかけた男の人が立っていた。

怪しい人に怖くなり、出ようか迷っていると、もう一度インターフォンが鳴らされた。

「ど、どちらさまですか？」

ドアを少し開けて尋ねると、怪しい人はメガネを取り、キャップのふちを軽くあげ、

「松本と申します。あの、財布昨日拾ったんですけど…。」と言った。

その人は紛れもなく、昨日助けてくれた男の人、松潤だった。

驚きのあまり固まっていると、松潤は私の財布を目の前にヒラヒラッとさせた。

私が手を差し出すと松潤は財布をポンっと上に乗せた。

松潤に会った驚きと、財布が戻ってきてホッとしたのもあって、その場にしゃがみこんでしまった。

「はぁーー。よかった…。」

「ぷっ。」

松潤に笑われて、パッと上を見上げた。

「あ。ごめんごめん。だって昨日気づいてすぐに追いかけたんだけど、すげー勢いで走って行っちゃったからさ。困ってると思って、免許の住所見ちゃったんだけど。」

「いえ、助かりました。昨日といい、今日といい助けてもらってばかりで申し訳ないです。
ありがとうございます。」

「おれも、全部拾ったつもりで鞄渡しちゃったし。悪かったなって。」

そう言って松潤はまたメガネをかけた。