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「どうだった?最後の文化祭」
「……どう?…うーん。まぁ、それなりに楽しかったかな。…藤ヶ谷は?」
「そっか。…俺もね、それなりに楽しかったよ。良い思い出になったかな」
「…そっか。劇、大盛況だったしな。頑張ってたもんな」
「…でも北山観にきてないでしょ?」
「あー…それが、最後のだけ観れたんだよね。丁度休憩時間と被っててさ」
「え!そうだったの?……なんだ…ふふっ…観にきてくれたんだね。…ありがと」
「うん…」
「どうだった?俺の王子役」
「…そりゃあ…かっこよかったよ(笑)」
「そ?……ふふ、嬉しい(笑)」
遠くを見つめていた藤ヶ谷が
チラッとこっちを見るのがわかって、
俺もつられて目を合わせる。
なんだか恥ずかしくて、
凄く、凄く、好きだなぁ って感じた。
「でもお前、キスの練習意味なかったべ?」
「えっ?………え?」
「ふっ(笑)……俺ちょうど背景交換手伝わされて裏側から見てたんだよ(笑)」
「……えー…マジかっ(笑)全然気がつかなかった(笑)」
藤ヶ谷が照れ臭そうに鼻を擦って
うわマジかー って、何度も呟く。
その姿が可愛くて、心臓がキュって
音を立てたようだった。
「あんな、練習ん時上手く出来てたのに(笑)」
「………」
…あれ。 俺、今なんか変な言い回しだったかな?
「…上手かった?」
「えっ?……あ、ん…っと、うん…」
「……じゃあ、今から本番やっていい?」
え?それはどういう…
聞こうと思って藤ヶ谷の方を見ると、
あの時みたいに 手のひらが頬っぺたに添えられた。
「ん…な、なに…」
「嫌だったら拒否ってよ…」
「………」
「しちゃうよ?……いいの?」
そんな、マジかよ。
こんな嘘みたいな展開、
俺、心臓、…やばい…
「い……いい、よ」
「…北山。…………好き」
「えっ……んん…」
信じられなくて、嬉しくて、
俺も好きだよって伝えたいのに
唇は藤ヶ谷に塞がれていて。
それが凄く、幸せだった。
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作者名:はむ | 作成日時:2017年4月20日 23時