（スピンオフ） ひっかき屋３ ページ30
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「藍沢さんコーチに贔屓されてるよね」
「今日私振り中こけちゃったんだけどさー、私達の事も下手くそって見下してそう」
部活終わりの更衣室
今日も話題は藍沢A
彼女は裏でこんなことを言われているのを知らないで、
コーチに呼び出されてまだ体育館に残っている
「瑞希今日話してなかった？」
「え、うん」
「どうだった？なんか怖い事言われた？」
怖い事？
想像だけでぽんぽん悪口が出てくるあんたらの方が怖いわ
「なんで？Aいい子だよ」
「うそだ〜」
「瑞希脅されたっしょ」
だからなんで。
ヒートアップする陰口にイライラして
出会って1か月の友達にきれるのもどうかと思うけど
気づいたら言葉が出ていた。
「ねえ、何かにつけて悪口言ってるけど、そんな相手に背中預けられるわけ？
Aは多分、みんなの名前も踊りの癖もよく知ってると思うよ」
全員の驚いた顔
沈黙
がら、
その沈黙を破るように遠慮がちにドアが開けられた。
『…なんか名前呼ばれた気がしたんだけど』
気まずそうに入ってきたAから全員目をそらしてそそくさと帰りの準備を再開する。
すると、Aは悪口を言っていたうちの一人にまっすぐ近づいた。
『古谷さん、これよかったら』
そういって絆創膏を渡す
「え…」
『今日転んですりむいてたでしょ？あの時渡す時間なくて今になっちゃったけど』
絆創膏を差し出すAの腕は擦り傷だらけ
「でも、藍沢さんも擦り傷たくさん、」
『私は慣れてるから大丈夫』
そういって恥ずかしそうに口角を上げる
「…いいの？ありがとう」
絆創膏を受け取った子は、ぽーっとAを見つめるしかない様子
その視線が恥ずかしいのか、さっと立ち上がって私の隣の自分のロッカーで着替え始めた
「じゃあAには私があげる」
ごそごそ鞄の底をあさって
かろうじて見つけた1枚の
はがれかけの絆創膏を差し出す
「ボロボロだけど！」
彼女は一瞬ぽかんとして
次の瞬間目元を柔らかくして笑った
『っ、ありがとう』
目じりを抑えて笑う彼女は新鮮で、美人の爆笑っぷりに思わず見入ってしまう
『あ、あとね、
名前読んでくれて、うれしかった』
顔を赤くして恥ずかしそうに微笑んだ彼女
決めた
私はこの、シャイで誤解されやすい親友を一生守るって
…まあ、その場にいた全員がおんなじこと思って
Aは大人気になっちゃうんだけどね
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ハク(プロフ) - 素敵な作品に出会えてよかったです…！！ 優しい言葉の選び方がとても好きです。ありがとうございました！ (2020年6月24日 23時) (
レス) id: 63b947b75a (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - みぅぅさん» そんなことを言ってくださるなんて最高に嬉しいです…ほんとは何回も消そうと思ったんですが、書き続けてよかったです。 (2020年6月11日 21時) (レス) id: c22b253f54 (このIDを非表示/違反報告)
みぅぅ(プロフ) - ほんとにこのお話大好きです。書き方もとても綺麗です。惹き込まれる書き方をしていて、とても凄いです…。これからも、応援しています。 (2020年6月11日 16時) (レス) id: 128c00d887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiki | 作成日時：2020年6月10日 15時
